「雨おんな」司馬遼太郎 著

この短編も、司馬遼太郎全集8に所載である。出雲の歩き巫女の「おなん」という女性が主人公である。関ヶ原合戦の時に、たまたま、この地にお供の者(与阿弥、市)と3人と旅をしていた。
夜、西軍に属した宇喜多家の稲目左馬蔵に最初に犯される。朝方には東軍に属した福島家の尾花京兵衛に犯される。ともに戦の前に女と交じると武運があるという言い伝えをつげる。ともに名を聞き、戦いの後に尋ねてくればと言うようなことを述べて戦いに行く。
関ヶ原合戦の時は遠くで銃声を聞きながら、怯えて過ごす。東軍の勝と知る。

その後、「おなん」は旅を続ける。岡山は宇喜多家の領地ではなくなっていたが、ここで稲目左馬蔵の消息を訪ねるがわからない。その後、安芸広島に行く。ここで尾花を訪ねる。尾花は思い出し、寝床で関ヶ原の戦話をする。それで福島軍と宇喜多軍と戦ったことを話す。尾花京兵衛に囲われて、屋敷に住み着いて2年になる。元々が旅をする巫女だから、この生活に飽きてくる。

広島城下に乞食のような武者が来て、勝負して負ければ「この首進上」と書いた高札を立てる。

福島正則の耳にも達し、「福島家の名折れだ。誰かと試合をさせろ」と命じるが、家老は尾花を呼んで、彼に足軽をつけて、この男を闇に葬ることを命じる。
京兵衛は暗殺に出向くが、「おなん」も同行することを許される。そしてここでの戦いの過程で、この乞食侍が稲目左馬蔵であることがわかる。戦いの中で稲目は川に流されるが、「おなん」は付き人の与阿弥に命じて、稲目を探させる。与阿弥が川原で稲目をみつけ、宿を世話する。

暗殺に失敗した尾花京兵衛も稲目左馬蔵を探していた。「おなん」はお供の3人で尾花の屋敷を出て、稲目がいる宿に向かう。
すると、尾花も探知して、すでに宿から稲目と尾花は出て、戦おうとしていた。
そこに「おなん」が来て、稲目であることを知り、尾花にいきさつを話す。そして闘う前に稲目が関ヶ原でのことを話す。関ヶ原で稲目は首2つを取って駆け回っていたが、敗軍となり、逃げようとした時に尾花が来て戦う。勝てそうだが、首をとっても誰も恩賞をくれないから尾花に自分が取った首を与える。尾花はそれも自分の手柄として出世をしていたわけである。

尾花は戦場で敵に命を助けられたことを恐れて、稲目を殺そうとするが、尾花は右腕は切られ、稲目はどこかに旅立つ。

ありえない話を巧みに短編時代小説に仕立てていて興味深いが、無理はある。無理筋だけに、何となく終末が見えてしまう。