「言い触らし団右衛門」 司馬遼太郎 著

全集8に所載の短編の一つである。大坂の陣で活躍した塙団右衛門(ばん だんえもん)を取り上げている。この人の事績もよくわからないようだが、数少ない良い漢詩が残されているそうだ。戦国乱世にしか生きられない人物で、戦いでは先頭を切って敵陣に突っ込んで槍働きをする人物である。
人柄、風貌などは作者の想像だろうが豪傑らしく描写している。遠州横須賀の生まれで、須田次郎右衛門と名乗り、秀吉傘下の武将加藤嘉明の足軽となる。しかし、すぐに退去して加藤家牢人(この肩書きが欲しかった)として、京都で仕官先を探す。その時、長命寺に盗賊が入った際に、盗賊を退治し、食客となる。ここの僧は観相の名人で、彼から塙団右衛門の名を提案される。

加藤嘉明が大名になった時に再度、傭われる。ただ雑兵扱いであり、大坂の町で売名行為というと悪いことだが、目立つことをしていた。加藤嘉明はこのような団右衛門を嫌っていた。
加藤家の朝鮮出兵時に動員され、その時に大指物を立てる時に団右衛門の怪力が役に立ち、これで名前が売れる。そして350石の物頭になる。関ヶ原の時は自分の鉄砲足軽を置いて、単騎で突っ込んで手柄を上げるが、軍律違反を問われる。これで嫌気がさして、再度、加藤家から離れる。奉公構とされるが、小早川家に仕官する。しかし小早川家が断絶して牢人になる。

ここで口入屋の出戻り娘とねんごろの関係になる。そして大坂の陣である。紀州徳川家からの仕官の口もあったが、大坂城に入る。そして冬の陣における夜戦の大将に任じられて手柄を立てる。この時に、「寄せ手の大将 塙団右衛門」という木札をばらまいて相変わらずの売名行為。

夏の陣では紀州方面の担当になるが、先陣争いをして、単騎突入。ここで大暴れするが、戦死。首実検が雨と腐敗で中止となった時に、ねんごろの関係となっていた出戻り娘が、憑かれたように、「われも一手の大将なり。首実検をしないと祟る」と言って、首実検を行ったという逸話を入れて物語りを閉めている。

面白い小説である。
(文庫本をリンクしておく)