「生誕125年記念 速水御舟」 於山種美術館

本日、刀剣の畏友H氏と標記展覧会に出向く。山種美術館は安宅コレクションの速水御舟作品も購入して、120点もの作品を保管しているという。山種美術館が広尾で新たに開館した時にも「速水御舟-日本画への挑戦-」展が開催され、それも妻と観に行ったことがある。
余談になるが、安宅コレクションは安宅産業の安宅英一氏が主導し、今は大阪市立東洋陶磁美術館に収蔵されている東洋陶磁(住友銀行が寄贈)も素晴らしいものである。美術品道楽で会社を潰したと言われるが、商社よりも蒐集した美術品の方が価値があると私は思う。

速水御舟は洋画の岸田劉生に比肩する日本画の中では最高の画家だと私は思う。以下、今回の展示品で私の記憶に残っている作品に感想を記していきたい。
「桃花」という色紙サイズを軸装にしたものは、桃らしい優しいピンクの花が実に可憐で美しく、そこに新芽の萌葱色がわずかに彩色されていて若々しく、欲しい作品だった。
墨画にわずかに彩色した「比叡山」も地味な絵だけど力があり、印象に残っている。これは写実というよりは比叡山の量感が迫ってくる。
「百舌巣」は百舌鳥の雛が2疋いる巣を描いたものだが、写実が生き生きしている。実際の鳥の巣らしく汚いものを写実的に画き、汚いという感じよりも真実らしい巣、鳥が安らかに生育する場を画いている。
「春昼」は古い民家を写生したものだが、明るい色調で爽やかで暖かい。国立近代美術館に収蔵されている奈良の民家を描いた絵と雰囲気は似ている。

重要文化財の「炎舞」は私がいい絵を前にした時に生ずる胸に水が上がってくるような感じがする凄いものだ。炎の形態は北斎のビッグウェーブに匹敵する。実際の炎の形は、もっと複雑なのかもしれないが、御舟の描く炎は北斎の波と同様に我々のイメージを掘り起こしてくれる。加えて、この炎の色、鮮やかな緋色というか不思議な色である。それが背景の黒というか黒茶色の中から浮かび上がり、凄いものだ。この黒の効果が効いている。そしてそこに非常に写実的で鱗粉までわかるような蛾を配して、舞を舞わせている。不思議な画家だ。

同時期には昆虫を写実的に描いた作品がある。

「朝鮮牛図」も不思議に力のある作品で、印象的である。黄土色の牛、どうということのない牛だが、写実・写生から別の境地にいっている感じである。

大きな屏風の「翠苔緑芝」はアジサイの花が立体的に描かれている。技法について説明が記されていたが、覚えてはいない。御舟は日本画において色々な技法を試している人である。この絵には黒猫がいたり、白兎がいたり、変な構図の絵であり、画家が何を狙いにしたのだろうか。

「夜桜」は桜の枝を夜景の中に画いたものだが、同様に夜の桜の絵が何点かあった。御舟は桜を夜に画きたかったようだ。夜の桜は何か妖艶な感じもする。
「紅梅」と「白梅」の一対の軸装があったが、すっきりと気持ちが爽やかになる良い絵であり、梅の香りも漂う。

もう一つの重要文化財「名樹散椿」。私は椿の愛好家でもあり、京都の地蔵院に出向き、この絵のモデルとなった五色八重散椿を観にいったことがある。実際の五色八重散椿よりも、この絵の方が背景を画いていない分、主役感が凄い。バックの金色の技法について”金箔”と”金泥”と、この絵に使われている”金砂子の撒きつぶし”の違いの解説があったが、艶消しの金の奥深さが理解できた。

ヨーロッパに出向いた時の作品が並ぶ。何より驚いたのは裸婦でデッサンである。素描3として展示されている作品は、この延長にキュビズムがあることを予感させられるものだ。

「鶴」は気品というか気格を感じる作品だ。「春池温」は何と読むのだろうか。絵は池の水面から鯉が頭を出したところに桃の花を配した絵である。水中の鯉、外に出て身体が濡れている鯉などきちんと描き分けていて素晴らしい。水もうるさく無く表現ができている。
「白芙蓉」も素晴らしい。枝葉は墨の濃淡で描き、芙蓉の花に白、花芯に紅色を僅かに配しているが、いい絵である。H氏も感服していた。
「秋茄子」も同様の作品である。

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