「大江戸武士の作法」小和田哲男監修

時代劇に出てくる武士ではなく、本当の武士の姿を図解で示すという本である。図が多く、内容も軽いものかと思っていたが、読んでみるとそれなりに面白く、参考になる。
大きく次の5章に分かれている。「1.暮らしの作法」「2.武術の作法」「3.行事の作法」「4.仕事の作法」「5.軍事・警備の作法」である。

「1.暮らしの作法」では、年貢米の支給は春と夏に25%ずつ、秋に50%という三季制である。蔵米取の武士は米俵で受け取っても運搬や保管場所にも困る。だから浅草の蔵前で支払手形を持参した武士が受け取るのではなく、それを代行する札差に委託して、武士は札差から現金を受け取る方式となる。前借りもあり、それが札差商人を大きくさせた。
また武士のお供などの最低の給与は三両一人扶持で、1日玄米5合分と別に年三両の現金支給であった。サンピン侍の蔑称はここからくる。

武士の格の違いでの家屋、門構え、お供の数などが違うが、それを図示してある。今の時代劇は武士は供を連れていないが、当時はこんなことはありえないのだ。
大名の江戸屋敷は塀と長屋が一体で、長屋に単身赴任の下級武士が暮らしていたのだが、その中の構造なども図示してある。単身の武士や町人が多かった江戸で発達した棒手振という商売や屋台の様子もよくわかる。
武士や町人、その夫人の衣服、髪形、食事の様子や、武士の旅行の衣服もわかる。

「2.武術の作法」では、それぞれの武術を簡単に紹介している。なお幕末には鎧の着方もわからなくなっていたようだ。

「3.行事の作法」では、元日の朝の行事から各節句の祝い方や、一番大事な八朔の行事などもわかりやすい。

「4.仕事の作法」では俗に茶坊主といわれている者も御用部屋坊主、同朋頭、肝煎坊主などに分かれていることを知る。勘定奉行が激務で、有能な者が任命されていたこともわかる。
火付盗賊改は治安が悪化した時代に、重大犯罪のみを扱う特命捜査隊のような位置づけで、武士も検挙することができ、取り調べも非常に厳しかったことが書かれている。
江戸の消防衣装、消防道具も図示している。

「5.軍事・警備の作法」では、幕府の大番組、新番、小十人組の旗指物が図示されている。上方の在番も任務だが、道中や上方での費用もバカにならず、厭がるものが江戸時代後期には多くなったようだ。

御庭番(将軍直属)、京都の禁裏付、仙洞付、八王子千人同心、鷹匠、奥医師、奥絵師などの役割やその姿も掲載されている。

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