「刀剣書事典」得能一男著

「刀剣春秋」という新聞誌上に発表された「古書遍歴」を改めてまとめたものである。次のような南北朝~江戸時代の刀剣関係古書について、その内容、意義などを解題的にとりまとめている。今の時代にこれらの刀剣古書を紐解く人はほとんどいないと思うが、著者の得能一男氏はこのような古書を読まれていたわけで立派だと思う。
得能氏と同様に村上孝介氏や福永酔剣氏、本間薫山氏など一時代前の刀剣専門家は古書を読まれており、教養の差を感じる。

本に記載の順に書名を列挙すると、以下の通りである。古伝書に興味のある人は、この本の解題を読んでから原典にあたると良いだろう。なお刀剣美術誌上で、本間薫山氏や間宮光治氏などが現代語訳をしている本もある。

『新刃銘尽』、『新刃銘尽後集』、『宇津宮銘尽』、『永禄銘尽』、『往昔抄』、『解粉記』、『鍛冶名字考』、『観智院本銘尽』、『木屋常長伝書』、『享徳銘鑑』、『口伝書』、『元亀本刀剣目利書』、『弘治銘鑑』、『校正古刀銘鑑』、『古今鍛冶備考』、『古今鍛冶銘』、『古今銘尽』、『古刀銘尽大全』、『可然物』、『上古秘談抄』、『新刊秘伝抄』、『新刀弁疑』、『新刀弁惑録』、『長享銘尽』、『天文銘尽』、『伝本阿弥光二押形』、『刀剣古今銘尽』、『刀剣図考』、『刀剣或問』、『刀工秋広口伝』、『直江本長享銘尽』、『能阿弥本銘尽』、『紛寄論』、『文明銘鑑』、『芳運本弘治銘鑑』、『本阿弥光心押形集』、『本朝鍛冶考』、『本朝新刀一覧』、『本邦刀剣考』、『三好下野入道口伝』、『銘尽秘伝書』、『明徳二年鍛冶銘集』、『安田本長享銘尽』である。

『観智院本銘尽』(『正和本銘尽』)は京都の東寺の観智院にあり、応永30年に写されたという日本最古の刀剣書である。

なお、刀剣鑑定は『日本刀大百科事典』によると、大宝律令の頃からあり、源三位頼政、北条泰時の時代の金窪行親などが知られていたようだが、鎌倉時代の終わり頃に名越遠江入道崇喜が出る。
南北朝末期に喜阿弥が出て、その系統に室町時代に能阿弥が出る。能阿弥から田使行豊、彼は備前の難波一族、難波掃部助の弟で難波行豊とも言い、赤松政則に属す。

美濃の斎藤弾正忠は相州秋広から伝授を受けたという。斎藤弾正忠から教えを受けた宇津宮三河入道(美濃の南宮大社の社家出身説が有力)が有名な鑑定家である。この子孫が竹屋裡安と言う。

本阿弥家の祖は松田姓で始祖のことはよくわからないが、室町時代後期から出現する。

阿波の三好一族も宗三左文字の宗三はじめ、三好長慶、三好実休、安宅冬康、十河一存と名刀を所持した一族である。

江戸期に入ると、本阿弥一族、研師の竹屋、木屋などが出て著述を残す。

新刀を取り上げたのが、神田白龍子の『新刃銘尽』が享保六年(1721)に発刊され、『新刃銘尽後集』が補足し、鎌田魚妙の『新刀弁疑』が安永六年(1777)である。
『本朝新刀一覧』は今村幸政が弘化2年に出版。1500余名に対する記述は高度な内容である。1から9で作位を表現している。研師で、京都の人である。
『新刀弁惑録』は新刀だけではなく、寛政9年に荒木一適齋甫秀が目利のことを書く。

『校正古刀銘鑑』は加賀本阿弥の本阿弥長根が天保元年に出版した良書。これで本阿弥家から追放される。
『古今鍛冶備考』は山田浅右衛門吉睦が主著者の名著。水心子正秀などの協力で完成した。
『古今銘尽』は万治四年(1661)の出版。竹屋系の伝書で一番売れた本である。『万宝全書』にも採録されている
次に売れたには『古刀銘尽大全』(仰木伊織が寛政四年に出版)である。

刀装具は野田敬明の『金工鑑定秘訣』である。これは『装剣奇賞』に次ぐものである。後藤家の各代の手癖などを図版で解説している。この巻は今の袋綴じのような形で売られていて、買わないと見られないようになっていたようだ。

『刀剣図考』は栗原信充が天保14年に発刊し、有名な刀の外装が掲載されている。『集古十種』のような本でる。

なお室町時代の本では豊後行平の人気が高いそうである。また陸奥鍛冶など今では顧みられていないが、それなりに評価されていると記されている。正宗十哲などは時代が下る刀剣書ほど高い評価になっていくと書かれている。


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