「日中戦争はスターリンが仕組んだ」 鈴木荘一 著

知人の鈴木氏の著作である。副題に「誰が盧溝橋で発砲したか」とある。鈴木氏の前著『満州建国の真実』を受けて、その後に日中戦争に至った経緯を書かれている。

「1.日本陸軍の親ユダヤ路線」では日露戦争の時の戦費調達で、ユダヤ人から支援を受けて感謝したこと、戦後、アメリカ人のハリマンから南満州鉄道を一緒に運営しようとの提案(ユダヤ資本を受け入れ)を首相桂太郎、元老などは賛成したが外相の小村寿太郎が反対し、以降、アメリカを敵にしたことを述べている。

「2.ロシア革命とコミンテルンの活動」の章ではレーニン、トロッキーが革命を成就させる。コミンテルンは世界の労働者階級を支援し革命に立ち上げさせるのが目的で、その一つとして、中国共産党が設立される。孫文も連帯する。日本人は孫文に親しみを感じているが、本質は日本の資金などを利用したのではないか。また蒋介石も日本で学んだから親日派と思う人もいるがソ連でトロッキーから赤軍の実情を学んでいた。

「3.ソ連の尖兵モンゴル人民共和国と対峙した満州建国」では、そのコミンテルンがモンゴル人民共和国を建国する。隣の満州は軍閥が割拠していた。日本は共産勢力が張学良など軍閥を打倒することで共産国家ができるのを懸念した。その為に満州国を建国したという意味合いもある。これは著者の前著『満州建国の真実』に詳しい。

「4.恐るべし「スターリンの兵法」」の章では、レーニンが死んでスターリンがトロッキーなどの赤軍の将軍たちを粛正して独裁体制をつくる。コミンテルンは、ソ連周辺国へ共産主義を樹立することが目的だが、スターリンになると自分の独裁権力を守るための秘密警察の国際工作機関となる。スターリンはドイツ、日本を米英仏に打倒させてソ連の安寧を守ることを考えた。そこで中国共産党と戦っている蒋介石軍を抗日統一戦線として日本軍と戦わせることを戦略とする。これが盧溝橋事件の遠因である。

「5.盧溝橋事件における日本陸軍の不拡大方針」の章は、西安事件を契機に国共合作ができたことに関して、蒋介石の息子の蒋経国は当時ソ連に留学中だったことを指摘している。盧溝橋事件がおきた時、日本陸軍の石原莞爾は不拡大戦略、一方部下の武藤章大佐は拡大戦略と陸軍はわかれる。参謀本部情報部ロシア課はコミンテルンの戦略とみていた。
中国側の汪兆銘の側近は盧溝橋のきっかけは中国共産党と述べているようだ。また劉少奇が差配したとの記録もあると書いてある。このあたりは、この本の眼目であるが、これら資料の出所が明記されていないのは残念である。

「6.日中戦争の泥沼」の章は、上海でも現地日本人が攻撃される。そうすると、それを保護する為との名目で軍が増派されて泥沼になっていく様子を記している。和平のチャンスはあるが日本側では広田弘毅外相や陸軍の一派が壊し、一方、中国共産党はそもそも戦いを望むから、各地で事件を起こし、泥沼に引きずり込まれる。昭和天皇も拡大路線(一撃して和平)であり、石原莞爾は失脚する。

近衛文麿は和平を望むが、トラウトマン(駐華ドイツ大使)を基軸にした和平工作もあったが、広田外相がつぶす。
宇垣一成外相の宇垣工作は次官の東条英機がつぶす。汪兆銘和平工作も人柄への不信からつぶれる。

鈴木氏は、和平を潰したとして広田弘毅などに厳しいのだが、ではこの時点でトラウトマンの和平工作にのっても和平がうまく行ったのだろうか。広田はこのことまで見通して、和平という名目で時間稼ぎをされるのを懸念した可能性もあると思う。
自国の領土に、名目はどうであれ、他国の軍隊が入っていれば、反感をもたれるのは当然であろう。


「7.ソ連の満州侵攻」では、ノモンハンはモンゴルがまず引き金をひき、それにスターリンが乗ったことが書かれている。同時に、国共合作に踏み切った蒋介石からのソ連への対日戦線へ参加への期待に応えた意味合いもある。
ここで司馬遼太郎が酷評した日本の戦車の実力について再評価を加えているのは新鮮である。

「8.終戦和平をソ連に依頼した陥穽」の章は、武藤章も自分が中支那方面軍の参謀副長になると泥沼の日中戦線に懸念を生じ、蒋介石相手に桐工作に着手し、蒋介石夫人の宋美齢の弟の宋子良を窓口とする。これが偽者で曾紀宏という工作員だったというお粗末な事態を記す。
そして日米開戦。昭和20年に戦局不利になり近衛上奏文をだす。ここでソ連に和平の仲介を頼む。ソ連は4月に一年後に日ソ中立条約を破棄すると言ってきているし、ヤルタで対日戦線参加を約束していた国なのであるが、仲介を頼んだお粗末さを記している。

新刊についている帯の宣伝文は、ネット右翼向けで、私は好まない。



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