「沖縄戦「集団自決」の謎と真実」 秦郁彦 編

この本は、沖縄戦において、軍が住民に対して自決しろとの命令を本当に出したかどうかが裁判で争われたことに関して、検証している本である。裁判では命令があったことは否定できないとなったようだが、この本はそうではないということを具体的な証拠から立証している。

命令があったとする側に大江健三郎などがいて、無かったと反証する側で藤岡信勝氏や秦郁彦氏や曾野綾子氏などがいる。

日本陸軍は、西南戦争以後は国土での戦いの経験が無く、また方針として外征作戦で国土を防衛しようとした為に、住民を包含して戦う国土戦の研究をしてこなかった。沖縄戦もそうである。

サイパン玉砕後に、住民10万人を島外に疎開させ、残る住民は島の内部に移して、軍の援護下に入るように方針を決める。ところが一部師団が台湾へ転出となり、作戦方針が沿岸決戦から内陸部の持久戦に変更され、住民を援護下に置くのが難しくなり、島の北部へ避難させることにする。アメリカ留学経験のある高級参謀の八原博通大佐が「米軍は文明国の軍隊であり、非戦闘員を虐殺するようなことはない」と述べて、北部移転を決めた。

ただ戦況の悪化が早く激しく進み、多くの住民が軍とともに南部に後退して混乱する。

沖縄住民の中にスパイがいると言うのは差別の一種であったと否定されるが、実際にはおり、軍の警戒心を高めた。

宮平秀幸陳述書が全文掲載されている。座間味集団自決の証言者宮城初枝の腹違いの弟である。軍の本部壕で村の村長、助役、収入役と国民学校校長、村職員に姉の初枝が同席し、助役が梅澤隊長に、「どうせ米兵に殺される。それなら忠魂碑の前に年寄りと子供らを集めるから自決用の爆弾をくれ」と懇願しているのを見る。

この要望に対して梅澤隊長は「自決させる弾薬などない。集まった住民を解散させろ」と言う。助役は「それなら毒薬、手榴弾をくれ」と食い下がる。梅澤隊長は「軍は国土を守り、国民の生命財産を守るのが軍。住民を自決させる命令は持っていない。」と断る。30分ほど押し問答するが、村の代表者たちはあきらめて帰る。忠魂碑の前で村長は解散命令を伝える。そこで解散して、自分の一家は母の懇意の兵隊さんがいる整備中退の壕に行く。そこで食糧をもらい、「決して死ぬでない」と言われる。
途中、国民学校教頭の山城安次郎にあう。彼は日本刀を抜いて、自決できないなら、おれが殺すというようなことを言うが、村長の言葉を伝える。
その後、負傷して米軍の捕虜となる。

大江健三郎は『沖縄ノート』を書き、この中で軍の命令があったと書く。これに梅澤隊長などが異を唱える裁判を起こしていた。文部省は平成18年の教科書に軍の関与を否定するように修正する検定意見を出す。これに沖縄は反対運動を起こす。福田内閣はこれで再度検定を見直す。

宮平証言が、この時期まで出なかったのは、この住民達が”集団自決が軍命令によるものだったという虚構の上に援護法の適用を受けて、国から累計で億円単位となる巨額な年金・給与金を受けていたためである。いわば村で暮らす上でタブーだったのである。
太田實中将の「県民に対し後世特別の御高配を」で、沖縄においては援護法の適用が大甘になった面もある。

宮城初枝も別の証言集で「隊長は「お帰り下さい」と自決の申し出を断ったと書いてある。「自決するでない」という発言は意図的にカットされていた。裁判では、これは不作為の作為として、暗黙に自決しろということだったというように歪曲される。命令ではなく関与という言葉に置き換えられていく。

曾野綾子は『ある神話の背景』、『生贄の島』を書き、その過程で多くの証言を聞いている。その中で赤松隊長が自決命令を出したという人は一人もいなかったそうだ。ただ出さなかったという証拠もないということと述べている。

「沖縄タイムス」、「琉球新報」の2大新聞が言語空間を支配して同調圧力を加えていたようだ。沖縄のマスコミの偏向報道のひどさは聞いていたが、この本を読むとなるほどと思う。

『鉄の暴風』を書いた伊佐良博は沖縄タイムスの記者だが、入ったばかりで、作家的な資質を持った人物だった。後に太田良博のペンネームで作家活動をしている。この本は持ち込まれる情報だけに頼った間違いの多い本である。米軍をヒューマニステッックに扱い、日本軍閥の旧悪をあばくという視点も意識的に持っていた人物である。

また宮平証言の中でも出てくる山城安次郞は「自決をオレが手伝う」と刀を抜いたような男だが、地元では住民を2人殺したとの噂も立てられる。捕虜から帰還後は工場をおこし、村の助役になるが、島では居づらくなって本島に移る。そして「沖縄日日新聞」を那覇で発刊する。その新聞を通して沖縄実業界の大物の具志頭(ぐしちゃん)得助の知遇を得る。新聞を買収してもらい、後に沖縄テレビの専務(後に社長)になる。

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