佐野市葛生化石館 「石と化石と宮沢賢治展」

石灰岩の中には化石が含まれていることが多い。フズリナの化石などは、ここで無料でもらえる。この建物は再利用したような古い建物なのだが、葛生で出土した色々な化石が展示されている。玄関には国歌「君が代」にうたわれる「さざれ石」もある。

素朴な展示(無料)なのだが、美術館でお会いした知人から「今回は面白い」と紹介されたのが「石と化石と宮沢賢治展」である。ご一緒に同行して、この企画を行った学芸員の方を呼んでいただき、案内していただく。若い女性学芸員であるが、オタク的な匂いがして刀剣オタクの私と同様な雰囲気がする。

館の一角に、こじんまりとした展示コーナーがある。私は宮沢賢治の作品に詳しくないが、宮沢賢治の作品には石が多く取り上げられているとのこと。例えば「風の又三郎」ではモリブデン、蟹の化石、砥石が書かれているようだ。
今回の展示では、その作品の一節(文章)が掲示(賢治の自筆原稿のコピー)されていて、そこに実際に該当する石が展示されているのだ。「銀河鉄道の夜」には黒曜石、月長石、金剛石、水晶、くるみの化石、青宝石、黄玉などが出てくるようだが、そこに黒曜石、クルミの化石などが展示されている。

宮沢賢治は小さい時から鉱物採集が大好きで、家族から「石っこ賢さん」と呼ばれていた。この学芸員さんは、今回、賢治が過ごした地区の川に出向き、自分で賢治の文章に書かれているような石を収集してきたようで、それを展示してある。

賢治が中学(今の高校)の頃には、近辺の山まで出向き、岩石を採集していた。盛岡高等農林(今の岩手大学農学部)で本格的に地学を学び、地質図なども作成できたようだ。もちろん岩石の知識も専門的である。

化石では、クルミの立派な化石を見つけ、北上川に東北帝国大学地質古生物教室の早坂一郎教授を案内している。早坂教授の論文に、宮沢賢治への感謝も記されている。この論文のコピーも展示され、実際の古代のクルミの化石が展示されてあった。

賢治は後に、東北砕石工場花巻出張所に勤め、石灰の使用の拡大などをはかる。「炭カル」などの言葉は宮沢賢治の造語とのことだ。

案内していただいた知人が驚嘆されていたのは、賢治の童話の中で、恐竜の化石が出るような夢を書くのだが、賢治の死後に、当該地層から恐竜の化石が発掘されたことだ。37歳で亡くなった賢治の死後40年目(1978)と聞いた。ちなみに日本で恐竜の化石が出たのはこの化石がはじめてのことだったそうで、賢治の予見は知人が感心されるのも当然だ。(恐竜の化石の夢は作品の「楢の木大学士の野宿」だっと思うが確信はできない)

芸術家(文学も芸術の一種)は未来を先んじることがある。だから本当の芸術家は生前は評価されることが無く、死後に評価となるが、宮沢賢治もまさに、その一人なのだ。ここの学芸員さんは、岩手県立博物館に常設展示されていた恐竜の化石のレプリカ(本物は東京国立博物館蔵)を借りだして、ここに展示している。

このような面白い企画展示は、他の博物館、あるいは宮沢賢治の文学館でも巡回すればいいのにと思う。若い女性の学芸員さんだが、拍手したい。宮沢賢治の作品も読んでみようかと思わせるような展示である。
<佐野市葛生化石展>
http://www.city.sano.lg.jp/kuzuufossil/

昼は知人に出流山の蕎麦屋さんにご案内いただき、新蕎麦と、珍しいユズきり蕎麦をご馳走になる。香りも良く、またユズきり蕎麦は初めてだが、柚の香りがして、色もほんのりと黄色、蕎麦は細く、堅目で実に美味しいものだった。はじめに出された豆腐もコクがあって美味しいものだった。ここまで山の奥に来ると、紅葉も美しく、晩秋の楽しい一日を過ごさせていただく。

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