「花鳥絢爛 刀装 石黒派の世界」展 於刀剣博物館

今、幕末・明治の金工とともに、石黒派の金工の人気が高い。中東の王族が石黒を買っているとの噂を聞いたことがある。「超絶技巧」から「絢爛豪華」が人気かと鼻白むところはあるが、浮世絵や伊藤若冲の絵でも、外国人の手に渡る方が丁寧に保存してくれる面もあり、悪いことではない。

今回の展示は、初代政常で13点、二代政常が4点、是常が3点、政明が9点、政美が17点、是美が3点、それに拵に付いている石黒政美のものが3点ほどである。
他に石黒政美の子で岡本家に養子に入り、日本画家として名を馳せた岡本秋暉の作品が1点である。

同時に展示スペースを埋める為のように、新々刀の特集展示も行われていた。ただ今回の展示作品は、新々刀にもかかわらず、保存、手入れの悪い刀剣(さび、ヒケ)が目についたのは残念である。

さて石黒派の展示だが、石黒政常、二代政常、政明、政美などが展示されることによって、同じ石黒派でも個性の違いがわかる感じがして興味深かった。

石黒政常は花鳥だけでなく、動物も魚(鯉)なども彫っている。鷹の金無垢目貫は華やかな感じだが、華やかと言うよりはシャープな彫りという印象が強い。そして、他の弟子筋の石黒政美など比較すると、それほどは絢爛豪華な感じはしない。
鷹の金無垢目貫などは、非常に精密な写実作品で、しかも動きの一瞬を捕らえた彫りで、これまでの金工に無い彫りであり、さすがと思う。
私事になるが、昔、この手の石黒政常の鷹の金無垢目貫を勧められたことがあった。もちろん非常に高価であった。ある本に所載されているものだが、そこの写真には後世の人が「金99.9%」だったか「24K」だかの刻印を打ってあるのが写っている。目の前の作品には、その刻印は消されていたが、本の写真を見てしまった後には買う気が無くなったのを覚えている。

ちなみに、私は石黒初代政常の小柄作品を、手スレがあるものだが所有している。この作品の鑑賞記にも書いたが、石黒初代政常の良さは、動きの一瞬、それも次の動作に移る一瞬を切り取って彫金にしたところにあると思う。絢爛豪華よりも、そのことに政常の評価を見い出したい。
http://katana.mane-ana.co.jp/touwa0611masatsune.html
展示されている竹図の作品も、風にそよいだ一瞬を描いているものがある。

政明もなかなかの名工である。政明の特色は、鳥でも一羽ではなく、群れているような絵を彫ったり、何か作品の構図に工夫しているようなところに特色があるのかとも思った。政明もそんなに華美な感じはしない。

一方、石黒政美は幕末薩摩藩の御抱え工になった為か、恵まれていたようで、より豪華な作品を製作している。この人の作品は絢爛豪華という感じである。
薩摩拵用なのかもしれないが、大きな縁頭(特に頭が大きい)が数点存在し、そのいずれもが、豪華な作品である。ただ、大きな縁頭の作品は図も独創的な絵で、力作であることがわかる。
ただ、全体的にここに陳列されているような石黒政美は絢爛豪華過ぎて、あまり私の好みではない。
時代、注文主の好みが、このような豪華な作品を造らせたものだろう。
私事になるが、昔、小鐔であるが石黒政美の四分一地で芦に雁を高彫りした作品を所有したことがある。この時、石黒政美には代があって、銘に差があると思った記憶がある。

三所物が多く陳列されていたが、後藤のものでもそうだが、三所の中では目貫が一番大きく、目貫に一番力を入れて作ったことが理解できる。目貫、小柄、笄と揃い物になっていても、作を比較すると、目貫が一格上ではないかと思えるものもあった。

今回の刀剣博物館の展示では、常には刀剣を並べる展示ケースでの刀装具の展示も多く、この場合は観にくいものであった。作品が小さいだけに、やはり上部から観られるような展示ケースの方が良い。
そもそも刀装具の彫りは細かいものであり、もっと写真(拡大)を活用した展示(一部には写真を活用してあった)を工夫しても良かったと思う。ルーペ付きの展示も一部あった。
図録は、2500円ほどした。取り立てた研究成果が発表されているわけではないようで、写真と展示の作品解説と同じ内容だけであり、少し高い感じがして、また今後、私が石黒の作品を買うことも無いと思い、買わないで帰った。
夏休みにはいった平日で、非常に暑い日であったが、来館者は例によって、外国人が2組4人、子供連れの男性、女性が数人であった。

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この記事へのコメント

リオン
2019年03月29日 15:34
ブログ楽しく拝見させていただきました。リオンと申します。
もし差支えなければ1点教えていただければと存じます。
石黒政美の四分一で揃えられた薩摩拵(狐揃い)を所有しているのですが、鐔だけが古金工の鉄鐔に変えられており、(それでも特別保存は通っているのですが)政美の四分一の鍔を探しております。
ご所持されていた葦と雁のものではデザインが合わないので、それが私のものとの揃いのものではないとは思いますが、政美の四分一鐔をほかにご存じであればご教示いただければ幸いです。(都内大手と九州の刀屋にもあたりましたが、情報を得られず)

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