「江戸時代」 大石慎三郎著

これは昔に出版された本だが、面白い本である。著者が江戸時代について書きたいことだけを書いているという本で類書とは違う。考えさせられる内容である。章立ては「1.世界史にとりこまれた日本」、「2.”大開発の時代”とその終焉」、「3.構築された社会」、「4.江戸の成立と発展」、「5.絹と黄金」、「6.分水嶺の時代」、「7.顔の社会」、「8.近世から明治維新へ」である。

「1章.世界史にとりこまれた日本」では日本が産出した金銀のことを記している。その中で鎖国の一つの狙いとして、西欧人が日本をメキシコ、ペルー化するのを防いだこともあると書く。そして鎖国は世界と接触する一つの手段だったと説く。

「2章.”大開発の時代”とその終焉」では、江戸時代の前期が大開発の時代で土木工事によって新田が造られた時代と説明する。鉱山開発技術と築城技術と用水土木技術が融合したわけだ。

「3章.構築された社会」では信州真田氏の例を出して、領主になっていった経緯を説明し、城下町の形成過程を説明する。

「4章.江戸の成立と発展」では江戸の発展についてである。町造り開発に加えて、参勤交代制、大名の妻子在府制、吉原のこと、明暦の大火による改めての町造りに触れる。そして、江戸は圧倒的に男が多い町で、そこにおける吉原のことも書いている。駕籠、車(大八車)のことや、江戸の上水道、下水道、ゴミ処理問題を書く。下水道は、糞尿が肥料になった為に、造られなかったということだ。ゴミは埋め立てに使われる。

「5章.絹と黄金」は、江戸初期は生糸、絹織物を輸入して、金銀が輸出代金として流出した時代、逆に江戸後期から明治にかけては絹を輸出して金銀を得たという皮肉を書く。絹は高級な女性の需要であり、その代表として家光の娘で天皇に嫁いだ和子こと東福門院の着物贅沢を書く。そしてそれが尾形光琳などの芸術を生む。

「6章.分水嶺の時代」は、江戸時代中期以降になると新田開発ではなく、農業技術が広まるとして農書のことに触れる。それが特産物農業に向い、経済は新たな発展をする。この結果、石高制などが動揺をきたす。そして農村における一揆なども多くなる。

「7章.顔の社会」は江戸時代の役人の汚職の実態を書くが、逆に賄賂を多く取ったと不当に貶められている柳沢吉保、田沼意次の良い点も書いている。広く、薄く、贈賄することで顔をつなぐのが江戸社会の一面だ。

「8章.近世から明治維新へ」は、明治維新で最大の利得者は誰かを探り、そこに明治維新の本質を探っている。利益を享受したのは下級武士であるが、薩長などの一部である。だから幕府中心に日本を建て直す勢力と、京都の朝廷を中心にしようとする勢力の争いが妥当なのではないかとする。そして新しい世を望む人は西国だけでなく全国にいたから、それほどの内乱にならなかったとする。
領主階級において大きな藩は藩内の特産物を専売制にして利益上を図ることもできた。薩摩藩の砂糖などが、その例である。だけど5万石以下の藩はそんなことはできずに、相当な借金をしており、藩として成り立たなくなる状況であった。藩によっては金を借りている商人に実質的に藩財政を預けるようなところもあった。だから版籍を返して、10%程の秩禄を受けてもそんなに被害はなかった。

以下は私の考え、感想だが、薩長以外の藩士はこれまでも貧しい状況だが、勉強していた知識などが生かせるようになったのかもしれない。
大名に金を貸していた上層農民や商人は、維新で没落した者、逆に時流に乗った者と様々であろう。
下層農民、下層町人はどうだったのだろうか。これも人によって様々だが、身分制は無くなり(士族、平民の区別はあったが)、昔より悪くはならなかったのではなかろうか。


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