「紀州の刀装具」 日本美術刀剣保存協会 和歌山県支部 編

紀州が地元の刀剣愛好団体が、紀州の鐔工、金工の事績や作品の紹介をしている本であり、なかなかの労作である。鐔工では、法安系、貞命系、国永系、金工では木下系(善勝、勝延)、岡井系(真栄、軌麗)、金子系、金原系(直貞、一双)、上田系(算経)、藪系(常之、常代)、中村系(常親、常正)が取り上げられている。

作品紹介の写真ではカラーと白黒の写真も良く、私は藪常代(亀の彫で有名)の亀の目貫をこの本で観ることが出来て、なるほど世評を肯定できるものだと納得した。雀の大小目貫もいいもので、一宮長常系らしく、身近な小動物は上手である。
金原直貞は柳川系だが、各種色金の使い方が斬新な鐔が掲載されていて、興味を持つ。

作品解説も、所蔵者が何度も作品を愛玩して、自分の言葉で書かれており、楽しい。たとえば次のような一節がある。

法安の作品では「地鉄の色調も角度を変えれば、赤紫・青紫と玉虫色に光沢を放ち、これぞ法安の「うわばみ鉄」と言わしめる所以であろう」と記されている。あっちに持って行ったり、こっちで観たりという所蔵者の鑑賞態度が見えるようである。

貞命の舵透かし鐔の一節「舵は、舟の進行方向を意のままに操るための道具であるが、何故かこの鐔には作者或いは所持者の人生願望のようなものが、込められているように思えてならない」とあり、所有者の感慨というか思いが出ている。

貞命の梅花透かし鐔の一節「貞命には無骨かつ抽象的な作品が多い中で、肉彫の手法により柔らかく膨らみをもたせ、更に耳際にけけても緩やかに肉を削ぎ、丸耳にしていることによって、ほのぼのとした初春の暖かみさえ感じさせてくれる異色作である」とあるが、ここまで書かれたら作者貞命も嬉しいだろう。

藪常代の竹に虎図小柄では「竹林を揺さ振る一陣の風、思わず立ち竦む虎、竹の動に対する虎の静、それぞれの一瞬の描写の冴えはさながら一幅の水墨画を見るようである」と作品の格調に合わせたかのように文章も格調が高い。

また、お国自慢も感想に出ていて、微笑ましい。

国永の干し柿透かし図では「蜜柑は言うに及ばず、紀州産の柿もシェアにおいては全国一を誇っている」と柿自慢。

常正の蜜柑図小柄において「今も蜜柑の”収穫量”はもとより、”味”においても和歌山県は日本一である」

こういうのを読んでいると楽しくなる。

残念ながら、非売品とある。

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