「謎とき日本近現代史」 野島博之 著

著者は予備校の歴史の先生のようだが、暗記の歴史ではなく、考える歴史の面白さを訴えて、この本を書いている。次のような問いを発し、その解を求めていく過程で歴史を学ぶというスタイルであり、歴史を学ぶ方法として一理ある。

その問いは、「日本はなぜ植民地にならなかったか」、「武士はなぜみずからの特権を放棄したか」、「明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか」、「戦前の政党はなぜ急成長し転落したか」、「日本はなぜワシントン体制をうけいれたか」、「井上財政はなぜ失敗したか」、「関東軍はなぜ暴走したか」、「天皇はなぜ戦犯にならなかったか」、「高度経済成長はなぜ持続したか」である。

「日本はなぜ植民地にならなかったか」では、日本の場合は早い段階から官僚制が確立していたことをあげている。徳川期の武士もいわば官僚だ。当時の世界最大の国イギリスの事情として自由貿易が大事で、それを阻害することがなければ良しとしたようだ。対ロシアとの視点でロシアが日本を植民地化しないかぎりイギリスとしても必要がなかったこと、日本国内に深刻な対立(民族、宗教)が無かったこと、日本は外来文化に比較的寛容だったこと、日本の識字率の高さにも立証されるように、西洋文化、技術の取り入れがスムーズにいったことなどを上げている。

「明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか」では、明治憲法下では総理大臣も国務大臣の一人という位置づけで、閣内不一致があると退陣せざるをえなかったこと、天皇の周りに権力(元老)があり、そこからの口出しに抵抗しにくいことなどがあげられている。

「関東軍はなぜ暴走したか」では石原完爾が満州に赴任し、満州を視察すると、ロシアから守るには平原であり、興安嶺まで行かないと守りにくいことに気付き、満州全体を領土化する必要を感じる。また、ソ連の軍備拡張の動き、中国国民党が全土を統一したことも環境変化であった。軍閥割拠の時は日本は張作霖を通じて支配していればよかったが、そうはいかなくなったこと、すなわち満州を独立させてしまえば中国国民党からの圧力はかわせるわけだ。また、日本国内は人口が急増したが不景気であり、そのはけ口としての土地が必要だった(アメリカは排日移民法ができて移民が規制される)、世界恐慌でアメリカは他国に口出しはしなくなったなどという要因が重なった結果とする。

このように面白い視点である。



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