「国の死に方」 片山杜秀 著

変わった視点で書かれた面白い本だった。ただ、その分、難解なところもある。著者は音楽評論家であり、思想史で慶応法学部の准教授という人物だ。映画「ゴジラ」の音楽を手がけた伊福部昭を紹介し、本の終わりの方で、東日本大震災での福島原発事故に、ゴジラのシーン-ゴジラが水爆で甦り、津波のように現れ、日本を破壊する。これに対処するのに国の役割は希薄で、民間の放射線医学者と古生物学者、それにその娘と、恋仲になる民間人が対策を考える-というところに、原発事故とダブらせる。ちなみにゴジラの方は、最後は大戸島の古老の言い伝えに即してゴジラはおとなしく引き上げるというストーリーとのことだ。私も小さい頃、この映画を観たが東京タワーを倒すようなところしか覚えていない。

それはさておき、権力は低きに流れる傾向にあることを歴史的に実証する。鎌倉幕府は将軍がいるが、次第に執権に権力が移り、その内に執権の家の内管領が権力を持つ。
室町幕府も将軍主導は三代くらいまでで、次いで有力守護大名から選ばれる管領主導となる。そして管領家の中の守護代三好長慶、さらに松永弾正と権力は移行する。

集団は優れたリーダーによって大きくなる。しかし大きくなればなるほど、リーダーは集団の隅々までは目が届かなくなる。こうして権力移行が進む。

江戸幕府は、こうした権力の下降を避けるために、複数の年寄、老中、さらに若年寄を使って実務を行う。
明治政府=大日本帝国は、諸機関に集まる情報を遺漏無く整理して、大局的な意思決定を行う上級国家機関がなかった。そこに元老という憲法に無い職制が置かれた。縦割り組織を横に橋渡す機能を担ったわけである。元老は維新の元勲、薩長の大物であり、薩長出身者が官僚、軍で幅を利かせている中では、それなりに機能した。しかし、一代限りであり、最後の元老西園寺公望が逝ったのは昭和15年。

太平洋戦争時には、陸軍は陸軍の情報を、海軍は海軍の情報をしまいこむだけで内閣には上げないし、上げる必要もない。一方、天皇は形式的指揮官で君臨すれども統治せずだから、どこも決定できない。結局、天皇は軍事参議官の長谷川清海軍大将に、本土決戦の準備状況を調査させる。長谷川は1945年6月12日に準備不十分と答申。6月22日に鈴木貫太郎首相に戦争終結に向けて努力するように伝え、最後は聖断で終戦する。

古代ローマの共和制においても、独裁官が非常時には置かれた。それは元老院が非常時に一時的に置いたもので、独裁官は独裁の期間が短いほど尊敬されたという。

現代社会は平時と非常時が不可分になっている。

ヒットラーは共産主義者とユダヤ人を排除するという非常時を造りだし、それをナチスが担うとして2重構造の行政にして、自分自身の独裁を続け、国家を死にいたらしめた。

スターリンは下の部局の力が付いて、目立ってくると、その部局を粛清する。1934年の党大会の中央委員139人の内、98人は処刑。赤軍では1937年から翌年にかけて5人いた元帥の内3人、15人の軍司令官の内13人、85人の軍団長のうち65人が粛清された。そして自身の権力を維持し続けた。粛清した人物の代わりは、官僚制だから下を引き上げるだけで済む。

戦前、普通選挙が施行される。各政党は舌先三寸のバラマキ公約と買収で、政党は普通選挙をやるたびに信頼を失う。その結果、軍部による5.15事件、2.26事件などがおこると、首謀者の方に民衆の同情が集まるようになる。

戦前の治安悪化は、農政の失敗によるところも大きい。1918年にロシアの共産主義革命の日本への伝播を防ぐためにシベリア出兵を決定する。軍事の為の米需要が起こり、米が少なくなり高騰して、富山で米騒動がおこる。
折しも1919年に朝鮮で3.1独立運動が起きる。朝鮮の暴動を防ぐ為に民心の安定の為に、朝鮮での米造りが奨励される。して、朝鮮、台湾で増産された米を輸入するようになる。
そこに、1923年には関東大震災が起こる。

朝鮮での米造りが本格化し、美味しい米「亀の尾」が輸入される。するとそれに押されて1926年から29年にかけて米価格が25%下がる。そして、1929年10月に世界的な大恐慌が始まる。1930年は米は大豊作、さらに価格は下がる。

30年に浜口首相が狙撃される。32年に井上準之助が撃たれる。5.15事件おきる。34年には大凶作=冷害。冷害だと東北が打撃を受ける。婦女子の身売りが出る。そういう農民の貧困にも同情した軍の若手による2.26事件が1936年(昭和11年)に起きる。

経済建て直しの為に、他国もブロック経済構想を持つ。日本も同様に考える。その結果、他国とのブロックとぶつかり、戦争の道。

以上の論旨は、私の浅薄な読後感だから、著者の言わんとするところと違うかもしれない。しかし、このような流れで国は死に、それが今も起こりえることだと警告しているのだと思う。民主党の現在の低迷などは、まさにバラマキ公約と、その結果に対する国民の失望の結果だと思う。そして、現在は自民が一強というのも、考えてみれば危険な道である。


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