「新版 雑兵物語」 かもよしひさ 現代語訳・挿画

面白い本である。原文は古語の俗語(関東のベイベイ言葉の元みたいな表現もある)でわかりにくいが、この本は現代語訳されていてわかりやすい。この本は高崎城主松平信興(1620~1691)の作とも伝わっているが、確かなところはわからないようである。江戸時代の雑兵(足軽)用のマニュアル的に読まれたようで異本も多いそうだ。黒船来航まで使われていたとあるが、江戸時代のことであり、そうだと思う。太平洋戦争の兵士のマニュアルにもつながるような内容だ。

当時の戦争を実際に知っている足軽から聞いた話を書いているような調子で進む。戦時には侍は、侍一人に、自分の鎧、着替え、消耗品、身の周り品、自分用の弓、鉄砲、槍などをかつがせる小者を連れ、馬の世話をする何人かの口取りも必要だ。それから長槍、鉄砲などの戦闘員も必要になる。それらが雑兵となる。

こういう雑兵が残した仕事の秘訣集でもある。例えば次のようなことが書かれている。

「鉄砲足軽は、首にかけた食い物袋の結び目は首の後ろ襟の真ん中にくるようにしてかないと鉄砲が構え難い、早撃ちするな、弾込めの棒は右側後ろの胴につっこんでおく、縦では陣笠にあたるし、横では隣の味方に邪魔になる。まず馬を撃ってから、人を撃つ。」

「刀は敵の手と足をねらって切り付ける。真正面からでは切れずに曲がる。」

「息が切れたら梅干しを出して眺めるのはいいが、食べてはだめ。それでも喉が渇くのなら死んだ奴の血や泥水の澄んだところを飲む。井戸は敵が糞を入れているからお腹をこわす。」

「胡椒を朝一粒かじっていれば寒さ、暑さにあたらない。唐辛子をすりつぶして全身に塗っておくと凍えない。」

「まむしで噛まれたら、そこに火薬を一匁のせて火をつけるといい。」

「弓は鉄砲撃ちの間にはいり、鉄砲と鉄砲の間で撃て。敵の右側から攻める。弦に折れ目をつけると切れやすくなる。」

「槍は突くのではなく、みなで気持ちをあわせて槍の穂先を揃えて、敵の槍を上から叩く。叩く時は、敵の背中の差した旗を叩くつもりでやる。突きくずしても一町(約110㍍)以上は追いかけない。常に槍の目釘に注意。」

「大脇差は首を切るには不便。反りが強いと歩く時に踵にあたるから棒のような刀をさす。そんな刀を鎧の上帯に差しているとなかなか抜けない。馬上の侍が刀を抜くと、自分の馬を切り付けることが多い。鉄鍋の柄のような反りかえった刀は馬の上で抜くのにいい。」

「武具に銀や金の飾りをつけるのはよくない。味方から寝首をとられる。大きな槍の鞘など戦争になれば役に立たない。武具に紋などつけておくと、捨ててあるとみっともない。」

「馬はきちんとつないでおかないと逃げ出して騒いでいると敵襲と勘違いして逃げ出す。」

「荷物の縄は里芋の茎をよく干して縄にする。味噌で味をつけて縄にしたから、刻んで水に入れて火に掛けてこねまわせば味噌汁の具になる。俵のわらぶたも馬の餌になる。とにかく戦の間は飢饉だと思って喰うことのできる草や木の実はもちろん、根や葉も拾って馬にくくりつける。松の皮はじっくり煮くさらかしてよけいなところを捨て、粥にして喰う。薪が手にはいらなければ馬の糞の乾いたのでいい。ともかく戦の間はにわか乞食。」

「敵が逃げた後で、霜のおりていない地面には敵が埋めたものがある。」

「矢があたった時は静かに抜け、頭を木に縛りつけてから抜け。怪我をしたら身体をまっすぐにして、風にあたらないようにし、笑ったり、大声をだすずに眠ってはいけない水気をあたえず、飯はやわらかく炊いたものを食べさせる。自分の小便をのみ、あらう。」

などと、医学的には正しいのかはわからないものもあるが、そういうことを除けば今でも通用するのではないかと思われるほど、実践的、具体的である。



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この記事へのコメント

うんこ
2016年08月14日 10:21
珍ー味っ

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