映画「武士の家計簿」&本「武士の家計簿」磯田道史 著

映画「武士の家計簿」を家族で観にいく。加賀藩勘定方の猪山家の3代にわたる家族を描いて、いい映画だ。

昔、この本を読んだことがある。原作は金沢藩士の猪山家の幕末から明治にかけての家計簿的文書を解説した本である。具体的、実証的で、なかなか面白い。まず本の内容から紹介したい。

猪山家は加賀藩の陪臣から算術の能力で直臣に取り立てられた家で代々勘定方(御算用者)を勤めた。
「算術から崩れた身分制度」という章があり、18世紀は日本に限らず世界でも算術の知識から身分制度が壊れてきたとして、国の財政部門や軍隊の砲術部門などのように算術が重視される部門では、世襲に無理が出て、ここから実質的に身分制度が崩壊していったことを述べている。ナポレオンもコルシカ島の貴族ではあったが、砲兵将校として頭角を顕した例も述べられている。
加賀藩は算術を大切にした藩で、それが明治の世に、算術が大切となる海軍に多くの人材を輩出した理由とある。

江戸時代は武士と言う身分を維持するための儀礼的費用(身分費用)が非常に大きいことを具体的に示し、これが武士の貧窮の一因としている。ただ、その身分費用によって維持される風習が武士が尊敬される理由であったも書いている。

江戸時代の武士階級は意外に離婚が多い(宇和島藩の調査では10%が離婚)という背景を紹介して、妻と実家との結びつきの強さを、妻の実家からの金銭的援助額から考察している。

また、日本におけるイトコ結婚の多さを家の格式重視の結果とも分析している。

後に政府の官員になるが、明治時代の官員の高給ぶりもよくわかる。その結果としての軍人、役人志向。その為の教育重視主義なども定量的な分析があり、よくわかる。

これに対して、映画の方は、猪山家の三代にわたる武士の生活を夫婦、子供との情愛を丁寧に描いている。それぞれの代での勘定方として特記されるべきことをエピソードに入れているが、本では特段、このようなことは印象に残らないから、脚本によるのだろう。
祖父は姫君輿入れの際に江戸屋敷の赤門塗り替え費用が足りないのを表だけ塗るという知恵で切り抜けたのが自慢(これは祖父自身が語るのだが、家族はまたあの話かと無視される)である。
父は藩が飢饉の時に支出する御用米にからむ不正をみつけたこと、家では猪山家の借金対策がメインの話になっている。その時の家族の葛藤などを描いていく。
そして息子は大村益次郎のひきで、明治の時代になって海軍の高官になっている。
親子、夫婦、ぶつかるところはあるのだが、それぞれ情愛を持って家族はつながり、家族代々の物語も展開していく。
また時代考証(特に使用人、商人の仕草など)も丁寧に描いている。


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