「日本人が知らない最先端の世界史」 福井義高 著

この本は、これまでの現代史に新しい視点を提供してくれるものだ。海外の資料を読み込んでいるから新鮮なのだろうか。大きく次の4つのパートに別れている。「「歴史修正主義」論争の正体」、「「コミンテルンの陰謀」説の真偽」、「大衆と知識人」、「中国共産党政権誕生の真実」である。内容が豊富であり、私の理解を超えており、以下は断片的な抜き書きである。

まず、日独同罪論を唱える者がいるが、ホロコーストと中韓が唱えている南京大虐殺、慰安婦問題を同罪などと欧米の歴史家は思っていない。それは絶対悪のホロコーストを相対化する議論として警戒される。またホロコーストと比較すべきは共産主義者の虐殺の方との意見がある。

インドではガンジーの非暴力主義とは別にチャンドラ・ボースの武闘路線がインドの独立をもたらしたと評価されている。インパール作戦は日本では馬鹿な作戦とされているが、インドの武闘派の独立運動にとっては意味のある戦略だった。インドにおける藤原岩市少佐のF機関の果たした役割は大きい。
イギリスはインドでも中国でも、第二次大戦前の権益を守るべく動いたが、失敗している。

スターリンのエージェント網は日本、アメリカに張りめぐらせていた。日本では外交官の泉、関東軍の小松原道太郎中将(ソ連大使館付き武官の時にハニートラップにかかる)がそうであり、小松原中将はノモンハンの当事者の一人である。小柳喜三郎海軍大佐もハニートラップにかかるが割腹自殺する。張作霖爆破事件もソ連の関与が疑われている。

スターリンのアメリカに対する工作はヴェノナ文書が公開されて明るみに出ている。原爆がソ連に流れたことや、当時のソ連エージェントのことが明確になっている。またヴァシリエフ・ノートの公開も、それを補強した。人名が多く出て、フォローしきれないから詳しく書けないが、かなりの浸透度だったようだ。

「大衆と知識人」では、最近、欧州で反EU・反移民政策への支持が広がっているが、これらの支持政党はマスコミなどの知識人によって「極右」とされるが、その具体的な政策はそれほど極端なものではないと言う。昔、フランスではド・ゴールが言っていたようなことだ。今のEU拡大、大量移民受け入れは一般大衆にとっては益無きエリートの暴走である。既存の保守政党がこれに反対しないから、第三勢力が伸びてきている。エリートの裏切りに対する一般大衆の抗議である。

米国のベトナム戦争時に、その強硬策に対する支持率を階層別(上層ホワイトカラー、非熟練労働者・失業者、大卒以上、中卒以下)で見ると、強硬策への支持が高いのは上層ホワイトカラー、大卒以上であり、大衆は好戦的ではないことが実証されている。そしてエリート層は、1964年と1968年では大きく支持率が変動している。要するに「風」に弱くプロパガンダに左右されるのは学のあるエリートである。

ナチスを支持したのは、カトリックとプロテスタント地域に分けると、後者に多い。農村部と都市部では農村部の方が支持が高い。ヒットラーはカトリックで、ナチスの当初活動地域のミュンヘンはカトリックの牙城であったのだがナチス支持はプロテスタントの方が高い。
そして失業率が高い地域、階層がナチスを支持したわけでもなく、エリート層が言うところのナチス支持下層中流階級説も誤りだったわけだ。知識人の偏見であったわけだ。

「中国共産党政権誕生の真実」では毛沢東はスターリンの傀儡だったことを実証している。スターリンの死後に毛沢東は関係を否定的に描く情報操作をする。スターリン在世中はモスクワとの無線通信システムの整備に毛沢東はこだわった。
中国共産党が天下を取ったのが1949年で日本が降伏した時は蒋介石政権。1937年にはじまった支那事変では日本軍が主に戦ったのは国民党軍。日本、国民党、汪兆銘と戦わせ、漁夫の利を得たのが中国共産党。ソ連のエージェントが国民党、汪兆銘軍、米国におり、暗躍したことが詳しく書かれている。


"「日本人が知らない最先端の世界史」 福井義高 著" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント