「鐔聖金家」 米野健一 著

鐔関係の古書である。知人から面白いとの推薦があり、読んでみた。著者の米野氏は熊本の刀剣商だった方であり、毀誉褒貶がある人物である。この本には、金家の作品に惚れ込んだ著者の思いがほとばしっており、こういう点は面白い。

金家には古来、二代説があり、それを著者なりに銘字、作風から解明しようとされている。初代を「大初代」、二代を「名人初代」として、ともに名工としている。この言葉と、著者が唱えた鐔の切羽台部分の厚さに関する「初代1ミリ、2代2ミリ、3ミリ過ぎればただの人」は、現時点で権威があるとされている鑑定機関でも使われており、それなりに認められているようだ。もちろん、やや厚めの金家をご所蔵の方は異論があると思うが。

私は、刀もそうだが、銘のわずかな違いで代別することに疑問があり、こんなことされたら自分の署名でも代別されてしまうよなと感じてしまう。作鐔時代の中で、銘字も作風も時代の好みや本人の技量、気力で変化していくのだと思う。
もっとも米野氏は、この本の中で作品もろくに観ないで、上記のような金家一代説を唱える人間を批判している。

この本には金家の作品図版が80枚、研究が必要なもの、別人と思われるものが12枚所載されている。実際に所持されたもの、ご覧になったもの以外に写真だけのものも含まれている。

この中には銘を消されたものとか、権威に「ここの絵がおかしい」と言われて、その部分を除去した鐔なども明記されており、なんとも言えない気持ちになる。

著者は金家は、鐔の世界にはじめて絵模様を取り入れたことを高く評価し、「金家の良さは顔にあり」とか「金家の生物はすべて生きて休み無く動いている」とか評している。

私は金家について、手に取って拝見したのは数枚、ガラス越しは何枚もあるという程度だが、鉄味、その錆色、造形(地の造りも含めて)はもちろんだが、遠近感の取り方に素晴らしさを感じる。人物の顔はルーペの世界であり、身近に拝見できないとわからない。
刀装具界が誇る名人には違いがない。



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