「はじめて読む人のための人間学」藤尾秀昭 著

いただいた本である。雑誌「致知」の編集長が執筆した本であり、この雑誌が取り上げる孔子から二宮尊徳、松下幸之助、安岡正篤などの言を紹介しながら、要は人間は環境や他人のせいにしないで、自分自身の心の成長を常にはかりながら生きていくことが大切ということをくりかえし説いている。

当たり前のことだから、以上のように書くと、何の面白みも感じぜず、流されることであるが、それを上記の先哲の言も織り込みながらやさしく記述した本である。

読むだけなら1時間もかからずに読める。だけど、本に書かれていることを実践しようとしたら一生かかってもできないということである。

そういうことで、私は読み流してしまう本である。

「源氏物語 時代が見える 人物が解る」谷沢永一解説 風巻景次郎・清水好子

刀剣に関する論文を次から次へと書いていたから、アウトプットに追われ、インプットの読書などは、関係する資料の渉猟・読み込みに終始していた。

この本は、久し振りに谷沢永一氏の名前をみたので読んだ。私は谷沢氏の著作は好きであり、この本は谷沢氏が書いた部分は解説だけだが、碩学の谷沢氏が選択した風巻景次郎と清水好子の文章を取り入れて、良い本に仕上がっている。

この本の第1部が「やさしい源氏物語入門」として風巻景次郎の文、そこに谷沢の解説。第二部が「「源氏物語」要約」として清水好子の文で、そこにも谷沢の解説という構成になっている。
風巻景次郎とは国文学の大家で、正岡子規以来の万葉集重視から古今和歌集、新古今和歌集こそ平安朝以来の文学の伝統を継ぐものだと再評価をした人物とのことだ。

清水好子とは関西大学の名誉教授として源氏物語についての研究書が多い人物である。

第一部は入門書として書いた本だから「文学について」「文学の種類について」「光源氏の物語」「源氏物語はどうして出来たか」の章に分かれている。
ここで、源氏物語はそれ以前に生まれた物語と違って怪奇なことがなにもない。ほんとうにあるかのように書かれている本であり、書かれている作中人物の気持ちも「そうだろうな」と思わせるところが目新しいと書く。

源氏物語は、帝の后の中でももっとも身分の低い人、帝が一番深く愛した人から生まれたのが光源氏。母は亡くなるが、帝はこの人によく似た藤壺を愛すようになる。その後、光源氏はこの人を愛すようになり、子供ができる。また光源氏は藤壺の姪にあたる女性紫の上を養女のように面倒をみるというように、母を早くに亡くしたという点は紫式部と共通だとする。

そして、源氏物語は当時の公家の中では位が低い受領クラスの娘が入内して栄華を極めるという時代が過ぎた時に執筆されたと書く。紫式部の母は早く死に、父に育てられ、父が兄に漢文を教える時に自身も学び、本に嗜むようになったことなどを源氏物語誕生のきっかけとしている。心を病んだことで作者は誠実になり、千古に読み継がれる文学になったとも書く。

第二部の清水氏は、源氏物語の各帖ごとを要約している。要約と言っても小説風にエッセンスをまとめているから、源氏物語を読んだ気になる。各帖に名付けられた名前(桐壺、夕顔、若紫など)の意味も考察している。

谷沢永一は、源氏物語は心の襞を1枚1枚めくるように丹念に述べる表現を大成した物語で筋の展開を追っていくより、より感覚的になって生動する気分を捉えようとしていると解説し、漢詩文の影響を受けていると書く。