「名画の読み方」木村泰司 著

この本は西洋美術を理解する上で大事なことが書いてあるが、一通りの西洋絵画の基礎知識が無いと理解するのは難しい本だ。同時に当時の西洋絵画がキリスト教の宗教画がメインであることから、キリスト教の知識(画題の理解)が無いと読みにくい。さらに言うと宗教画のもう一つのギリシャ神話の知識が必要だ。

19世紀までは、絵画は見るものではなく読むものだったと言う。確かに宗教画は、文字の読めない民衆をキリスト教に誘うものであり、絵本のような絵で理解してもらうことが大事だったと思う。
絵画のジャンルを歴史画(聖書などを題材とした宗教画や、神話のストーリーを画いた神話画、抽象的概念を絵で表した寓意画)、肖像画(神が創りたまえた人間を描く)、風俗画(日常生活を描く)、風景画、静物画に分けている。そして、この順が絵画の価値(ヒエラルキー)を物語っていた。だからそれらを画く画家も、この順で社会的地位が高かった。

当時の発注主は高位聖職者や王侯貴族であり、歴史画と肖像画が主になる。歴史画の付属として風景や静物であり、これが生まれたのは17世紀以降となる。17世紀以降に新興市民階級が勃興してきて絵画に対するニーズ、嗜好が変化してきたわけである。
19世紀の民主化と社会の多様化によって絵画のヒエラルキーも曖昧となり、崩れていくわけである。そこから印象派などが生まれるわけで、それ以降の絵画鑑賞と、それ以前は別のものと著者は書く。

宗教画は目で見る聖書。ユダヤ教は偶像崇拝を禁じているが、キリスト教は2次元の偶像崇拝は容認されていた。画く題材は旧約聖書、新約聖書の大事な物語となる。例えば旧約聖書のストーリーでは「天地創造(神が7日をかけて大地や生物を創り、最後に人類を創る)」、「アダムとエヴァの楽園追放(神の命に背き、蛇の誘惑で知恵の木の実を食べ、楽園追放)」などである。

新約聖書では「受胎告知」、「東方三博士の礼拝」、「最後の晩餐」などである。

そして描かれる人物(聖人、神話の主人公)は、それぞれ象徴する持ち物を持って描かれる。それをアトリビュートと言う。日本でも「竹があるから虎だろう」「牡丹があるから猫だろう」となる。

例えばヨハネは鷲、ペトロは鍵、逆十字架、ヒエロニムスはライオン、骸骨などだ。

神話画ではギリシャ神話が元である。ヌードを描く時は神話画が口実になったわけだ。16世紀のローマやヴェネチアは人口に対して娼婦の占める割合が高く、宮廷人を意味するコルティジャーナと呼ばれた高級娼婦が、江戸の花魁のような存在になる。音楽や文学などの諸芸に秀でて賞賛され、女神のモデルになる。
オリンポスの12神もそれぞれにアトリビュートを持つ。ユピテルは鷲や雷電、牡牛や白鳥、黄金の雨などである。

肖像画のはじまりは早く、古代ギリシャからあるが、4世紀にキリスト教が普及すると個人の肖像文化は廃れる。14世紀に復活し、決まりごとは四分の三正面像。全身像は王侯貴族向け、上層市民階級は半身像、職業を表す道具と共に画かれる。16世紀に神話が王侯貴族の間に浸透すると、扮装肖像画もしくは寓意的肖像画が生まれる。アルチンボルドのルドルフ2世がそうである。
17世紀のオランダでは集団肖像画が生まれる。これは記念写真だ。

風俗画は16世紀からフランドル地方で発展し、17世紀のオランダで黄金時代。オランダでは戒めの絵画がはやる。庶民の風俗=悪徳を反面教師としてとらえた。

18世紀のフランスでは雅宴画という風俗画がロココ時代とともに生まれる。上層市民階級向けである。中堅市民階級向けの絵画も出る。バルビゾン派などがそれである。

風景画は、背景としての風景から独立していく。理想的な古典文学のイメージを画いた理想的風景画がはじめである。
17世紀後半からイギリスの貴族がグランドツアーという修学旅行をヨーロッパ大陸に出かける。そのツアーの記念、思い出の絵はがき的なヴェネチアの風景画などが好まれる。

静物画も17世紀に市民階級が勃興したオランダから生まれ、日常生活にあふれるもののシンボリズムで、神秘主義の台頭もある。

国立西洋美術館に行くと、常設展は時代別に展観されている。印象派の部屋までは大半が宗教画、神話画であまり面白くない。印象派の部屋に来ると、一挙に明るくなる。そして20世紀の部屋は抽象画が多くなり、わけがわからなくなる。
私は、別に絵が何を意味しているかなどはわからなくても、自分の心に響くかどうかであるから、この本のような知識を必要としないが、基本知識だと思う。

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