「司馬遼太郎全集9 功名が辻」 司馬遼太郎 著

山内一豊の妻千代と、山内一豊の物語である。織田信長の家臣で50石という小禄で「ぼろぼろ伊右衛門」と異名を持っていた山内一豊が、美濃で評判の美人という千代を嫁にもらって、千代の内助の功もあって土佐24万石の一国一城の主となった経緯を小説にしている。

冒頭は結婚式の当日からはじまる。千代の父は浅井家家来の若宮喜助で、千代が4歳の時に戦死し、母・法秀尼の親戚の不破家で育つという設定である。不破家が母を通して金十枚を鏡箱におさめさせ、これは夫の一大事の時に使うようにと持たす。これが今に伝わる一豊の妻の逸話(名馬を購入)につながる。

伊右衛門こと一豊は、織田家の一つ岩倉織田家の家老の家だったが、信長が岩倉織田家を滅ぼした為に没落していたとの設定である。だから何となく気品のあるような描写をしている。真面目で実直という性格設定だ。

千代は夫を立てながら、するどい観察眼で、夫が良い方向に行動するように助けるという典型的な賢夫人として描かれている。
二人の間には娘が一人しか生まれなかったが、結婚当初に一豊が千代に誓ったことを守って側室も置かなかったという設定だが女忍者との出会いを書く。また一度だけ、千代が側室を進めた顛末も記されている。
なお千代との間の一人娘は長浜城主時代の天正大地震で圧死している。そして捨て子を拾い、養育し、この人物が湘南和尚になり、山﨑闇斎の師となったようだ。

甲賀忍者を登場させて都合良く小説の筋を整えていくのは司馬遼太郎の小説手法だが、ここでも望月六平太を登場させて、この絡みで前述した女忍者との関係が生まれる。

成り上がり者と蔑まれていた秀吉の与力になったのが一豊の幸運の第一歩である。郎党の五藤吉兵衛と祖父江新右衛門と一緒に戦っていく。金ケ崎の殿戦の時に顔に矢が刺さる大けがをするが武功を立てて200石となる。
姉川の戦いでも武功を立てて400石となる。千代の進言で石高以上の家来を傭う。
浅井攻めの横山城の陣でも手柄を立てて1000石となる。長篠合戦にも参加、石山合戦にも参加して2000石となる。この時代の戦闘ぶりは生き生きと書かれている。

この後に10両の名馬を千代のへそくりで購入する有名な物語が入り、一豊の名(評判)が知られる。

そして中国攻めに参加して、ここでも手柄を立てて、敵から名鑓を分捕る。本能寺の変があり、その弔い合戦では功名がなかったが、3000石となり、長浜城番を任じられるが、柴田勝家との戦いの前に、播州に移される。この時、千代の助言で京都に屋敷(実質は諸将の人質)を希望する。千代が政治力を教えるような形である。
柴田方についた瀧川方の伊勢亀山城を攻撃する。一番乗りを果たすが家来の五藤吉兵衛を失う。賤ヶ岳の戦いでも武功を挙げるが3500石になっただけで秀吉子飼いの清正、正則に比較して不満を持つ。

小牧長久手の戦い後に、秀吉の天下が固まった段階で長浜2万石になる。
この頃、京都で千代は唐織の端切れで、色の配合が面白い小袖を作って評判となる。これを無償で気に入った女性に与えてしまう態度であった。日本の服飾デザイナーの嚆矢である。

小田原攻めに秀次傘下の大名として参陣し、山中城攻めでも功を立てる。この後、掛川6万石になる。徳川家康への備えとして秀次傘下の大名が東海道筋に配置されたが、その一人である。

この頃、千代は徳川家康に関心を持ち、次の天下はこちらと思う。一豊は主筋の秀次の元に伺候するのが嫌になる。秀吉に世継ぎが生まれた後に、秀次は乱行に走り、秀吉に誅される。秀次妻女などの虐殺を聞いて、秀吉も耄碌してきたと千代は思う。

千代は、関ヶ原の前に石田方からの勧誘の手紙を封を切らずに小山の一豊の元に届ける。近江生まれの者を使いに出したので関所が通れる。これをそのまま家康に渡すようにと助言してあり、家康は感激する。
そして小山会議の席上、隣りの大名のアイデアを借りて、自分の掛川の城を提供すると申し出て、会議の空気を作る。これを家康は功として土佐24万石にする。関ヶ原の戦いでは南宮山の下に配され、大した働きがないまま終わる。

土佐では一領具足の反乱に悩まされ、相撲の興行にこと寄せて殺害するという汚点を残す。千代はこれには反対で、長宗我部の遺臣を家臣に加えるように進言するが、聞く耳をもたない。これが一豊の器量なのだと千代は思う。
高知城の建設は難工事だが、完成し、千代は一豊が逝去後は京都で暮らす。

千代の賢妻ぶりを強調して書いてあるが、千代の上司の気持ちを見抜くような気配りは面白い。

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