「司馬遼太郎全集4 竜馬がゆく 2」司馬遼太郎 著

 この巻からは「坂竜飛騰(ばんりゅうひとう)」と称せられる坂本竜馬が飛躍する時期の物語になる。同時に、幕末の事件が次々に起きてくる。司馬遼太郎はこれら事件について、自分なりの意見も入れて詳述していく。だから司馬遼太郎の時代小説に不可欠な女性の登場が取って付けたようになる。
 そして司馬遼太郎なりの人物評も多いことに再読して気が付いた。好き嫌いも激しく、山内容堂などはボロクソである。この延長に『坂の上の雲』における乃木大将への酷評があるのかと思い至った。

 さてこの巻では、勝海舟のもとで築地の軍艦操練所を拠点として学んでいく竜馬である。竜馬は海舟の引きで幕臣の大久保一翁、永井玄蕃頭などと知り合い、視野を広げていく。そして勝の尽力で、操練所として練習船を持つ夢を実現させる。土佐藩脱藩の罪は海舟が山内容堂に頼んで赦免してもらう。

 こういう中、長州藩、土佐藩の維新の人材が挿話として紹介されていく。長州の周布政之助(重役だが、頭も良く、度胸もあるが、おだてに乗りやすく気が短い)、山内容堂(自分が利巧で英雄と思うが視野が狭い)、来島又兵衛(長州藩の過激派の豪傑)、高杉晋作、山地忠七(土佐藩士、日清戦争の独眼竜将軍)、乾退助(土佐藩士、後の板垣退助)、近藤長次郎(土佐藩、元饅頭屋で、塾での竜馬の片腕)など次々と登場する。司馬遼太郎の歴史夜話的な話である。

 幕府の蒸気船に乗れるようになるから、勝海舟の指示も受けて大坂と江戸を何度も行き来する。以前ならば歩いての道中だが、幕末は次から次へと新しい銃砲が登場する武器革命の時代だが、交通革命も起きていたことが理解できる。

 また勝の紹介で、越前の松平春嶽とも知り合うが、この殿様は坂本竜馬と会い、彼を評価し、越前公からの山内容堂への竜馬赦免要請も出る。

 武市はこの頃は土佐藩で影響力を高め、京都で影の土佐系暗殺団を影で示唆していた。勝海舟が京都に来た時に竜馬は勝を殺さないように武市に言い、岡田以蔵には直接言い含めて、勝の用心棒とする。
 三条家は攘夷公卿として有名だが、そこにいるお田鶴さまも三条家の一員らしく、竜馬に攘夷に起ち上がるように促す。
 お田鶴さまに会う約束の前に火事に出会う。そこで火災の中から人助けをすることで安政の大獄で死んだ楢崎将作の遺児のおりょうを知る。そしておりょうを寺田屋の養女に手配する。

 越前藩の三岡八郎(後の由利公正で五カ条のご誓文の起草者)に神戸の海軍塾の購入代金の交渉にいく。そんな経緯で神戸軍艦操練所ができ、そこに土佐脱藩浪士なども勧誘する。紀州藩の脱藩浪士伊達小次郎こと後の陸奥宗光も入所する。土佐の浪士は後に吉村寅太郎の大和の天誅組の義挙に参加して斃れる者も多い。
 ちなみに土佐郷士は武市半平太の土佐藩自体を勤皇にしようとする武市半平太の土佐勤王党、吉村寅太郎の過激暴発派(天誅組事件)と竜馬の海軍派のように別れていく。ちなみに土佐には天保庄屋同盟と言う組織が天保年間にできて、そこでは庄屋は藩ではなく、天皇から任命された職という一君万民の平等思想が広がっていたそうだ。

 土佐では山内容堂が藩政に戻り、勤皇派を弾圧していく。郷士を捕らえ、拷問し、吉田東洋暗殺の黒幕の武市の罪を暴いていく。武市が国元で投獄され、岡田以蔵の証言で他の武市の暗殺示唆が明らかになって切腹させられる。見事な最期だったようだ。これ以降、土佐郷士の脱藩は増える。

 時代はどんどん動き、長州藩への外国艦隊の砲撃がある。このあたりに竜馬が新撰組に襲われるエピソードを入れる。そしてこの時は藤堂平助が組長で、北辰一刀流の同門で竜馬を見逃すような筋にしている。後に藤堂平助は御陵衛士として新撰組を抜け、殺される。

 江戸の清河八郎の暗殺事件や新撰組の活躍=尊皇攘夷の志士の惨殺が横行する。薩摩の人斬り田中新兵衛の姉小路卿暗殺事件を書く。薩摩と会津が手を結んだ八月一八日のクーデターで長州は追い落とされる。薩摩と長州が犬猿の仲になっていく様子を書く。

 江戸に戻り、千葉道場のさな子とのことが色取りを添える。さな子の方から告白するが、この後、ついの別れになる。
 土佐勤王党弾圧を逃れて、北添佶摩などの土佐脱藩浪士が来るが、彼等を死なさないために蝦夷地開拓に使おうと行かせるが、北添は後に池田屋事件で死ぬ。

勝が長崎に行く時に同行する。長崎が気に入り、熊本で横井小楠に会う。

 高杉晋作の長州、西郷隆盛の薩摩の、それぞれの国元の状況を書く。京都で長州藩は暴発する準備をする。古高俊太郎の家で準備するが、新撰組に感づかれ、池田屋事件となる。

 この後、長州藩による禁門の変が起こる。この時は薩摩がおさえる。

 池田屋事件や禁門の変で、神戸海軍操練所の学生が参加していたことから、勝海舟は失脚して、神戸海軍操練所も閉鎖となる。ここで薩摩を頼ることになる。
 おりょうといい仲になるエピソードが挿入される。また乾退助から三条家のお田鶴さまの消息を聞く。神戸の操練所が閉鎖されて竜馬が去ったあとに、お田鶴さまが男装でここに寄り、またおりょうも来て、2人が会うという設定をつくる。

 勝海舟失脚の後は、薩摩藩が竜馬の後ろ盾になっていくが、西郷隆盛の人となりが語られる。その西郷と深く知り合うようになる。
 そして竜馬の胸に薩摩と長州の同盟のことが思い浮かぶ。西郷の上司の小松帯刀が登場する。貿易会社に出資ということで竜馬は薩摩を誘う。

 薩摩藩邸でやっかいになる。長州藩の内情や薩摩藩の内情が語られる。第一次長州征伐で長州の勤皇派は壊滅して、門閥派の天下になる。この第一次長州征伐を参謀として指揮したのが西郷隆盛。

 土佐藩の脱藩浪士は長州藩に面倒をみてもらっており、また長州に落ち延びた五卿を守っている土佐浪士土方楠左衛門久元などがいる。中岡慎太郎は長州忠勇隊を率いていた。

 幕府は第二次長州征伐をしようとしている。この時、フランスの援助で戦おうと小栗上野介などが画策している情報を得て、これは植民地支配を招きかねない危険なことだと竜馬は西郷に言う。ここで長州との同盟を求める。

 長州では絵堂で上士軍が奇兵隊などに破れ、高杉晋作も出て、クーデターが成功する。
桂小五郎も帰ってくる。
 竜馬は長崎で薩摩藩の出資も得て、亀山社中を造る。

 いよいよ薩長連合の話が具体化していく。まず、中岡慎太郎が薩摩で西郷を説得し、一方、長州で竜馬がまず五卿を説得し、賛成を取り付け、次ぎに長州藩の桂を説得して薩摩藩と会わすことにする。しかし、この時は西郷はすっぽかして京都に行く。桂は怒る。薩長連合は難産である。