「司馬遼太郎全集7 新撰組血風録」 司馬遼太郎 著

司馬遼太郎全集7には「新撰組血風録」と「幕末」が収録されている。「新撰組血風録」は子母沢寛の「新撰組始末記」を意識したのだろうが、新撰組隊士にまつわるエピソードを書いた短編が15編収められている。
「血風録」とあるが、各編の内容は殺伐としたものだけではない。

刀に関する短編も「虎徹」と「菊一文字」の2編が収められている。前者は近藤勇の愛刀で、池田屋事件で名を馳せた虎徹は実は偽物だが、後に大坂の豪商鴻池家から貰った本物の虎徹を佩用した時より、偽物佩用時の方が運が良く、しかもよく斬れる。近藤は虎徹は斬れる方が本物だと言ったようなことが書いてある。
「菊一文字」は沖田惣司を気に入った刀屋が鎌倉期の名刀:備前国一文字派の則宗を沖田に預ける。沖田はこの気品に圧倒されて、襲われた時に刀を抜く気がしなかったが、この賊が沖田の部下を殺害したことで、則宗で斬るという物語である。
共にあくまで小説である。

「油小路の決闘」では新撰組から後に分離した伊東甲子太郎一派の御陵衛士に参加することになる篠原泰之進を主人公に書いている。伊東のように政治的な動きをしない古武士的な篠原がひょんなことから新撰組の隊規に反することをし、それが心の重荷になって伊東派に入り、伊東が暗殺された油小路でも生き延びて明治まで生きる。

「芹沢鴨の暗殺」は芹沢鴨の性格、態度と、彼を暗殺して主導権を握る近藤らの暗殺事件である。
「長州の間者」は長州藩に父祖が縁ある浪人が竹生島で出会った女の縁から長州藩のスパイとして新撰組に入隊する。新撰組における長州のスパイは、他にもいるようだが、誰かはわからない。池田屋事件の前に露見し、思いも寄らない他のスパイとともに殺される物語である。

「池田屋異聞」は池田屋での探索に任じた監察の山﨑烝が赤穂藩で卑怯者とされた奥野将監の子孫であることをひょんなことから知り、攘夷浪士大高忠兵衛(赤穂浪士大高源吾の子孫)と因縁に絡んだ対決をする物語である。
「鴨川銭取橋」は一時は近藤勇に信頼された武田観柳斎が薩摩藩と通じたことで粛清される話である。
「前髪の惣三郎」は新撰組内の衆道(男色)を巡る争いを書いた物語である。
「胡沙笛を吹く武士」は奥州南部藩出身の隊士鹿内薫のことで、勇敢に戦う男だったが、所帯を持ってから臆病風に吹かれるようになった人情の機微を書く。

「三条磧乱刃」は芸州浪人の国枝大二郎が新撰組に入隊し、そこで新撰組古参の井上源三郎と出会うことで井上の人柄を描写していく。2人はともに剣術は大したことは無く、その稽古を外部からの侵入者に見られ、嘲笑されたことで2人で探索して戦う。
「海仙寺党異聞」とは、新隊士の長坂は会計方に配属されるが、同じ甲州出身者の中倉が隊内にいることを知る。中倉には情婦がいて、その情婦は水戸の赤座という浪士とも密通していた。現場で中倉は赤座に切りつけられ、士道不覚で切腹となる。長坂が介錯を行い、その後、中倉の仇討ちをするはめとなる。水戸藩の京都での宿舎海仙寺にいた赤座や過激派を斬る。水戸藩との後難を恐れた土方は、長坂に金を渡して脱走させる。長坂は長崎で医術をおさめ、明治になって広沢一豊と名を改めて繁昌した。

「沖田総司の恋」は沖田の労咳を治療した医師の娘との恋に落ちた沖田の話である。土方は気が付き、近藤にも伝え、嫁にもらうように近藤は行動する。沖田は自分の病気で長くないことを知っており、土方、近藤のお節介を迷惑に思う。
「槍は宝蔵院流」は槍の師匠として入隊した谷三十郎と、その息子で実は備中松山の板倉家の血筋を引く男にまつわる話である。導入部に隊士斎藤一とのエピソードを入れる。近藤は、この貴種を養子にして近藤周平と名付ける。谷三十郎も近藤の縁戚になったことで威張り、隊士に嫌われる。池田屋事件後に2人は疎まれ、周平は離縁され、谷三十郎は土方の意を受け斎藤一によって粛清される。

「弥兵衛奮迅」は薩摩藩浪人の富山弥兵衛の話である。伊東甲子太郎が富山が私闘して腹を切ろうとしている時に出会い、勧誘する。富山も薩摩藩の新撰組内の密偵的役割を担うことで入隊する。
薩摩言葉しか話せないと思っていた富山がわかりやすい言葉で奥州出身の隊士と話しているのを土方が聴き、監察に探らせて、粛清することになる。粛清に出向いた武士が斬られ、富山弥兵衛は逐電する。その後、伊東は新撰組から御陵衛士として抜け、弥兵衛も参加する。油小路でも戦い、その後の戊辰戦争では薩軍の一人として戦うが北越戦争で奮迅の末に戦死する。
「四斤山砲」は新撰組が会津藩から借用した大砲を出羽浪人大林兵庫(永倉新八と知り合い)と称して入隊した者が助言して射程は伸びる。実は強い薬を入れただけで、砲を痛めるのだが、幹部は知らない。会津藩で砲術を習って、これまで責任者だった隊士阿部十郎は黙っているが、隊士間の中で、大林の評判は悪くなる。その内、大林の経歴詐称がわかる。象牙職人の息子だった。阿部は伊東一派に奔り、伊東が油小路で暗殺されてからは薩摩藩を頼る。鳥羽伏見の戦いで、阿部は薩摩軍の大砲陣地で新型の四斤山砲を担当し、新撰組の大砲陣地の大林の狼狽振りを見ながら、破壊する。

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