「世界史としての日本史」半藤一利、出口治明 著

 日本史の視点に世界史からの考察を入れるとわかりやすくなるというお二人が言わんとするところはよく理解できる。しかし、その例として第二次世界大戦の記述が多くなる。そしてこの大戦については、ヒットラーとスターリンを知ることが大切として、その二人のことがわかる本の紹介として、普通の人は読まないような本を列挙しているのを読むと、この本は何なのかと思う。新書は入門書であろう。

 以下のように面白い話も多い。
●ペリーの黒船来港が捕鯨船の水や燃料補給の為と習うが、アメリカは大英帝国に対抗して中国での権益をとるためには太平洋航路を切り開くことが大切だったとの記述が米の文書にあるとのこと。

●白鳳時代の女帝が多くなったのは、男性皇嗣が幼かったり、病弱だったからと言われているが、中国の鮮卑の女帝や唐の武則天などの東アジアの女帝の流れの一環としてとらえるべきではないか。

●元寇も、モンゴルの軍人の失業対策事業のような感じで諸外国に兵を送っており、本腰を入れていない。

●日本の天皇制が続いたのは天皇に権力が無く、権威だけだったから。それを明治政府が天皇に権力もつけて国を滅ぼすに至る。

●『坂の上の雲』は青年期の日本がロシアの横暴に耐えて耐えて、ついに乾坤一擲の勝負を挑んで勝つというイメージ。この時、ロシアでは革命が始まっていた。日本が革命騒ぎに乗じて満州の権益を得ようとしていたのでは。ただ日露戦争は出口を常に考えていた。

●自尊史観と自虐史観は表裏一体。愛国心が劣等感と結びつくと、攻撃的、排他的になる。劣等感は、日本のここがすばらしいという風潮に振れる。

●第二次大戦での総力戦は永田鉄山は意識したが、他は本当の総力戦がわからなかった。だから生産量が落ちた。一方、ドイツは敗戦時まで生産量は落ちていない。総力戦は軍事だけでなく経済が大事。

●第二次世界大戦のポイントはヒットラーとスターリンの特異な指導者。そして戦争のポイントは圧倒的な力を持つアメリカの参戦。この参戦を引きおこしたのは真珠湾。そして真珠湾攻撃に至る軌跡が日本の敗戦の理由。ノモンハンで陸軍伝統の対露戦戦略が頓挫。

歴史を学ぶ上や、人生における対処の仕方にも、参考になる話もある。
▼戦前の旧制高校の学生は語学を一生懸命に学び、原文で読んでいた。このような教養が大切。

▼「経線思考」がある。例えば負けそうだったのに勝ったと言うと、勝ったことから次ぎに話に移り、どんどん事実から離れていく。これに日露戦争から太平洋戦争に至るまでに日本は陥った。不正の積み重ねを続ける企業と同じ。

▼ともかくリアリズムが大切。これに徹して世界を見る。こういうところに教養が役に立つ。

▼今はアメリカを通してしか世界を見ないと危険である。アメリカは気の弱いところもあり、独りだと不安になる。イギリスはその意味でアメリカの同盟国である。

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