「司馬遼太郎全集5 竜馬がゆく 3」司馬遼太郎 著

 全集ではこの巻で「竜馬がゆく」は完結である。どこまで史実かは別として、全体を通して、坂本竜馬の人物像や考え方はよく描かれている。人物像は司馬遼太郎が好むところの権力欲や金銭欲が薄く、自分のやりたい仕事に情熱を注ぎ、女性にもてる男、男も惚れる男である。そして竜馬の考え方は、藩という枠、武士、百姓、町人などの身分制度から離れた日本人を意識し、国家運営の能力のある人を抜擢して、欧米列強に互して繁栄していくということだ。
これを浮きだたせる為に、各藩ごとの立場を背負った維新の英傑が登場し、土佐藩の上士と郷士の抜き差しならぬ関係を詳述していく。商人でもある坂本家の家族も登場して、竜馬の思想・考え方の基礎を知らしめる。傑作である。

 この巻は薩長連合に奔走する竜馬からはじまる。長州方の人物として井上聞多と伊藤俊輔が登場する。2人は海外に渡ったことがある。竜馬と中岡慎太郎は薩摩藩士と偽って、京都、下関、長崎で薩長連合の為に奔走する。薩摩藩では高崎左太郎が京都での応接係であり、竜馬は思想や主義ではなく、実利で薩摩と長州を結び附けようとする。長州の米を薩摩藩に提供して、薩摩藩の名目で武器を輸入しようとする。結局、薩摩藩は長州の好意は受け取るが、米は受け取らず、これが海援隊の支援になる。

 海援隊では饅頭屋の近藤長次郎こと上杉宋次郎が実務的に切り回し、長州藩に感謝される。長次郎の人柄もあり、海援隊の仲間からは浮き上がり、長次郎は隊の仲間には無断で海外渡航を試み、それがバレて切腹することになる。

 長崎での銃砲の買い付けがうまくいき、長州藩は薩摩藩を信じる。長州で竜馬は高杉晋作に会う。長州藩が買った船乙丑丸を海援隊が運用することも決める。長崎丸山の芸者お元と知り合う。お元は月琴が得意で、竜馬に想いを寄せる。

 長州から槍の名人三吉慎造が竜馬と同行して兵庫、京に行き、薩摩藩士と偽って大坂の薩摩藩邸につく。将軍と一緒に来坂している幕臣大久保一翁にあう設定で、ここで薩長連合はまだ幕府に知られていないことを確認する。
 大坂から船で出る時にバレそうになるが、千葉道場同門の新撰組藤堂平助が見逃す。そして寺田屋に到着する。そこから京の薩摩藩邸に行く。そこに滞在している桂に会うが、桂は西郷から薩長連合を切り出さないのでへそを曲げている。竜馬は桂に面子を大事にしている場合かと説き、別の藩邸にいる西郷にも会い、連合の締結を迫り、次の日に盟約がなる。

 寺田屋に戻るが、ここで三吉とともに幕府役人に襲われる。おりょうが裸で竜馬に知らせ、竜馬は短銃(高杉にもらう)を撃って逃れ、薩摩藩邸に収容される。手の親指を負傷する。この場面など生き生きしている。
 ここからおりょうと薩摩に遊びに行くというか、日本はじめての新婚旅行となる。
 薩摩で、長崎から海援隊の所属(薩摩藩が金を出して、海援隊が運用)が来るのを楽しみにしていたが、この船が嵐で沈み、池内蔵太などが死んだことを知る。

 長崎を経由して下関に向かう船に乗る。長崎でおりょうとの家を用意する。下関に向かうが、第二次長州征伐の戦いが行われている。竜馬もこの船で戦う。高杉の活躍の様子が描かれる。大坂城で将軍家茂が死に、勝海舟が復職して、長州の広沢兵助と停戦交渉を行う。

 幕府の小栗上野介がフランスから資金を借りて戦を行い、諸藩も潰して徳川家の力を復活させようとする構想を知る。これを受けて薩長は倒幕を急ぐ。竜馬も、そうなった時に日本がフランスの植民地にされることを危惧する。

 竜馬は下関で肥前大村藩の渡辺昇とあう。千葉道場での同門であり、九州諸侯連盟の話を利の面からする。薩摩の五代才助という経済がわかる人物とも知り合う。下関で諸藩の連中と飲む。中岡慎太郎が来て、長州征伐失敗後の京都の情勢を伝える。また京都で制札を引き抜いて新撰組と戦い、土佐郷士が何人か死んだことを中岡から知る。

 長州から長崎に帰るが、海援隊は窮迫している。そこに土佐藩から来ている溝淵広之丞と出会う。土佐藩も幕府が長州征伐に失敗したのを見て動揺している。ここで溝淵の上司の後藤象二郎と出会う。山内容堂のお気に入りで仕置き家老を務めている。後藤は維新のこの時期だけ活躍した人物である。後藤と会い、海援隊を土佐藩が援助することを決める。

 長崎の有名な女傑のお慶と知り合う。のちに陸奥陽之助が懇ろとなるが海援隊の為に出資してくれて、薩摩藩が保証人となって大極丸を海援隊が購入できる。
 中岡慎太郎は陸援隊を構想する。中岡から孝明天皇の崩御を知る。竜馬と中岡の脱藩が土佐藩で許される。土佐藩と海援隊の間で契約ができ、大極丸の保証人も薩摩藩から土佐藩になる。このとき土佐藩の長崎留守居役に岩崎弥太郎が抜擢されてくる。弥太郎は後藤象二郎の遊興の後始末をしている。
 岩崎弥太郎、後藤象二郎の人物像の描き方もうまいと思う。

 伊豫大洲藩の出資でいろは丸という蒸気船を購入する。これに銃砲などを積んで神戸に向かう途中で、紀州藩の船とぶつかり転覆する。万国公法で竜馬が交渉して、最期は土佐の後藤象二郎が出て勝訴する物語が展開される。竜馬の活躍ぶりが生き生きと描かれる。

 中岡慎太郎は四賢公による列侯会議を唱えて活動していた。アーネスト・サトウの案からヒントを得たものである。また長州で逼塞している三条公の身辺を警戒していた。三条公の意を受けて、京都の岩倉具視との連絡にもあたる。また中岡は土佐の乾退助(板垣退助)とも連絡を密にしていた。

 四賢公会議の段取りで駆け回り、実現に漕ぎ着けるが、容堂は途中で投げ出す癖があり、今度も歯痛の理由で抜ける。

 竜馬は長崎で後藤からの京都の情勢を聴き、大政奉還を思いつく。元は勝海舟の案である。後藤象二郎に伝え、後藤はこの案に夢中になる。そして容堂も賛成する。船中八策と称されている案を考える。

 そして京都に向かい、中岡や薩摩の大久保一蔵に伝える。これを幕府が認めない時は薩長土で倒幕と決める。結局、土佐藩は兵を出さない。
 土佐藩で使っていなかった白川藩邸を陸援隊の拠点にすることを認めてもらう。陸援隊に那須盛馬を呼ぶことにし、那須の武歴が紹介される。
 竜馬は幕府の永井主水正にも大政奉還案を話す。西郷、大久保や岩倉にも会う。また土佐藩の者にも会う。

 ここで長崎で海援隊士がイギリス水兵を斬ったと大騒ぎになっていることを聞く。竜馬は鼻から海援隊によるものではないと信じていたが、幕府や土佐藩は大変な騒ぎだった。
 大坂で松平春嶽に会い、山内容堂に今度の長崎の事件でも万国公法に基づいての処理で行うべきとの手紙を書いてもらう。兵庫から船で渦中の長崎に帰る。幕府役人も長崎に行くがそれより早く行くことにする。
 長崎で事件は海援隊ではないことを確信し、イギリスは土佐に出向くが長崎で交渉とさせる。後藤は外国人との交渉ごとでも堂々と対応する。アーネスト・サトウがイギリス側通訳で登場する。

 海援隊は下手人の情報に千両出すとする。竜馬は宣伝も上手である。交渉が始まり、下手人はわからない中、イギリス側も幕府との交渉は意味ないと思い、審議打ち切りとなる。幕府は形式だけ土佐藩に恐れ入れと言うが竜馬は無視する。藩の長崎留守居役の岩崎弥太郎が恐れ入り、お構いなしとなる。
 長崎から長州に行き、ここでおりょうを三吉に頼み、土佐に向かう。ここでは秘密に上陸し、後に親族に会う。

 それから京都に出向く。後藤が大政奉還の為に奔走している。後藤は土佐藩兵を連れていないで口先だけの大政奉還であり、薩摩は何だと思う。西郷や長州は武装蜂起である。後藤は近藤勇にも大政奉還案を話し、近藤は後藤に傾倒する。

 中岡から岩倉が倒幕の密勅を出すことに画策して、それが出る。同時に慶喜が大政奉還をする。竜馬は大政奉還した慶喜を高く評価する。その後の人事案も考えるが、ここには竜馬は入っていない。竜馬は福井藩で閉門されている三岡八郎(由利公正)の赦免を松平春嶽に頼みに行く。
 その後、京に戻るが、風邪気味で宿舎に寝る。そこに中岡慎太郎が来る。そして刺客も来て竜馬の命を奪う。

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