「司馬遼太郎全集3 竜馬がゆく 1」司馬遼太郎 著

 大作の「竜馬がゆく」である。全集本で3冊に別れているから、1冊ずつ感想を記していく。再読すると、さずがによくできた小説だと感心する。
 冒頭は龍馬が江戸へ剣術修行に行くところから始まる。ここで竜馬を取り巻く乙女姉さんをはじめとする家族や富裕な家が紹介される。富裕な家と言っても郷士であり、土佐藩の上士と郷士の身分意識は繰り返し述べられる。また幼少期の性格や、学問には不向きで、剣だけは日根野道場で一頭地を抜いてくることなどが記される。江戸で剣術修業すれば、土佐で町道場主として食えるのが、江戸に行く理由である。

 司馬遼太郎は小説に魅力的な女性を次々と登場させて読者を飽きささないが、ここでも、主筋の福岡家の娘お田鶴さま、公家侍の娘だが親が討たれ女郎屋に売られた冴、千葉道場の娘で剣術も行うさな子、土佐で評判の娘お徳、讃岐の居酒屋の亭主お初、竜馬の親戚の娘美以などである。皆、竜馬に惚れている。
 色恋沙汰にはならないが、姉の乙女、出戻ってきた姉のお栄、妹の春猪、それに寺田屋のお登勢などの女性も物語に色を添える。
 また道中で、竜馬に家来にしてくれと頼む薬屋、実は盗賊の寝待ちの藤兵衛や、船頭の七蔵、それに千葉道場の若先生の千葉重太郎の脇役も出てくる。
 それから、維新で活躍する桂小五郎、土佐藩の維新で名が出る武市半平太、岡田以蔵、岩崎弥太郎、那須信吾なども出てくる。

 道中での竜馬の主筋の福岡家の娘、お田鶴さまとの出会いを絡める。お田鶴さまは京の三条家に手伝いに出向く道中である。あとの話になるが、安政の大獄で追われている公家侍を助けて道中を同行するが、一時の油断に公家侍は捕らえられる。その時に密書を預かり、それを三条家に届け、お田鶴さまに再会する。またこの軟弱な公家侍が国事に奔走する態度に打たれ、政治に目が覚める。

 竜馬の将来(海援隊)を暗示させるように船頭と懇意になるところも入れる。大坂では金に困った岡田以蔵に狙われる。逆に竜馬が金を与え、竜馬に心酔させる。道中、薬屋に化けた盗賊の寝待ちの藤兵衛がどういうわけか、竜馬の家来にしてくれとくる。伏見では寺田屋のお登勢と知り合う。

 江戸ではその寝待ちの藤兵衛が、公家侍の娘冴の仇討ちを手伝ってくれとのことで、その仇の侍と戦う。冴は仇を討つべく、弟と旅にでるが、弟は死ぬ、冴は女郎屋に売られているという設定である。冴は竜馬に男女の道を教えようとするが、後に冴はコレラで死ぬことになる。

 千葉周作の弟の定吉の桶町千葉道場で剣術修行をする。ここで千葉重太郎と妹のさな子が登場する。さな子は自身も剣術をし、竜馬に惚れるが、竜馬はその気がないまま1巻では終わる。
 また江戸の土佐藩邸で武市半平太と知り合う。武市半平太は土佐一藩を勤皇にする画策をする。竜馬は土佐だ、長州だという藩も取り払わなければという考えを潜在的に持っていて、一緒には行動しないが、肝胆相照らす仲となる。

 時代は黒船の登場となり、竜馬も見に行き、軍艦に憧れを懐く。そこで長州藩の陣立てを探るように命せられ、歩きまわるが、桂小五郎と出会う設定である。また黒船に乗り込もうとした吉田松陰のことなども知る。

 土佐で大地震があり、一時帰る。ここでお田鶴さまに再会する。夜這いに行く時に若侍が別の評判の美人のお徳という娘のところに出向かせるようにして、お田鶴さまのところには出向けないで終わる。土佐では岩崎弥太郎も登場する。

 江戸に戻り、剣術修行の甲斐があって、竜馬の剣は上達して、各種試合で剣名は高くなる。土佐藩邸では中岡慎太郎などを知る。
 竜馬の江戸遊学の期限が来て、土佐に帰ることになる。安政の大獄がはじまる。この道中の公家侍と同行し、護衛することになった顛末は前に記したが、預かった密書を三条家に届けることで、お田鶴さまに出会う。

 土佐には武市も帰っており、色々と時世を談ずる。絵師の河田小竜から世界情勢を聞く。その間、土佐郷士と上士の間の刃傷沙汰もおきる。
 そして桜田門外の変を聞く。また水戸藩から遊説に来ている人物の話も聞くが、竜馬はピントこない。

 武市が音頭をとった土佐勤王党に加わる。その土佐勤王党のことを岩崎弥太郎が探っていた。弥太郎は土佐の執政吉田東洋の知己を得て、下横目という卑職についていた。
 実家の才谷家の商家の方に美以という美人の娘がいて、竜馬の妹の春猪が合わす。
 また那須信吾という郷士も知る。この男は後に武市にそそのかされて吉田東洋を暗殺して脱藩する。

 竜馬は藩へ剣術詮議の為の旅行願いを出し、長州にも出かける。道中の讃岐の居酒屋でならず者と喧嘩するが、この亭主のお初という女性と懇ろになる。
 また丸亀藩の剣術使いとも懇意となる。

 長州で久坂玄瑞に出会う。この男の熱気にも竜馬は同調できないが、時世を知る。
 この後に土佐に戻った竜馬は脱藩を企てる。その時にいい刀を家から持ち出そうとするが、かなわない。その時、出戻りで来ていた竜馬の姉お栄が嫁いだ先でもらった刀、陸奥守吉行を竜馬に渡す。この為に、お栄は後に自殺することになる。
 それから吉田東洋暗殺事件のことが記される。このように大きな事件ごとに、その詳細を書き、絵空ごとの多い時代小説を史実に即した歴史小説に持って行くのも司馬遼太郎の腕である。

 脱藩は沢村惣之丞と一緒で、先に脱藩している吉村寅太郎を頼るが、なかなか会えない。ここで薩摩藩の内輪もめの寺田屋事件が起き、その詳細が記される。
 京に潜んでいる時に清河八郎(北辰一刀流)と出会う。そして江戸まで旅をする。清河の考え方も策士過ぎて、竜馬は気に入らないが。司馬遼太郎はここで清河に、自分は藩の後ろ盾が無いから、このように策を考えると言わしめていてなるほどと思う。
千葉道場に戻る。さな子は恋い焦がれるが進展しない。
次ぎに生麦事件が起こり、この詳細が記される。

 そして鳥取藩に仕官した千葉重太郎も攘夷思想に染まり、勝海舟を斬ると言う。一緒に勝つの造った軍艦操練所などを見ている内に、船好きの竜馬の血が騒ぐ。面談して斬りに行こうとして勝の家に出向くが、竜馬は勝の弟子入りを志願する。