「飛び加藤」 司馬遼太郎 著

 全集2所載の忍者物の短編である。「飛び加藤」と称せられる忍者だから、木の枝から枝へと飛び移るのが得意な忍者だと思って読みはじめたが、そうではなく、集団催眠術をかけるのが得意な忍者である。

京の街中で、小男だが釣り上がった目が異常に光りを帯びた武士風体の者が、さまざまな口上を述べて、真言を唱え、これから、この大きな牛を呑み込むとか言って、周りの群衆にそう思わせるような術をかける。この時は松の上から見ていた男が「牛の背中に乗っているだけだ」と見破る。今度は種から夕顔の花を咲かせる術をかける。牛の催眠術を見破った男は松の木の上で殺される。
この術を上杉家の家臣2人も見ており、謙信への仕官を勧め、上杉家へ連れてくる。道中、気にいった女を術で攫うようなこともする。女に対する趣味は悪い。

 謙信は10日の間、自身の忍者を使って飛び加藤の身辺を探らせるが、謙信の忍者も根を上げる。謙信に目通りさせた時に、謙信がこの薙刀を家臣の家に預けておくが、それを取り出せるかと試す。飛び加藤のその後の様子を書いていく。そして当日はその屋敷に忍び込み童女を連れてくる。「刀はどうした。盗めなかったな。」と謙信が言うと「それは偽物」と言う。謙信が改めさすと、その通り偽物であり、本物は納戸にあった。

 10日間、御伽衆として話を聞いたりしていたが、だんだんと気味が悪くなり、殺そうとするが、そこでも衆人を驚かすような術で逃れる。

 余談として、その後、武田信玄の元に行くが、信玄は用が無いと言って、数挺の鉄砲で殺したとの伝承などを紹介して物語は終わる。

 幻術と言うか、集団催眠術のようなものだから派手な立ち回りもなく、読んでいる立場では馬鹿馬鹿しさが出る。小説には難しいと思う話を書いた点に司馬遼太郎のうまさがあると言える。