「大夫殿坂」 司馬遼太郎 著

 司馬遼太郎全集12所載の短編である。この作品は、作州津山藩の大坂屋敷勤めの武士が死去し、その跡目を剣も使える弟が継ぐことからはじままる。
 兄の跡目を継いで大坂に来て見ると、藩邸のものも、何となく兄の死の真相を隠しているように感じる。そこで真相を探るべく、動きだすのだが、藩邸の者はこぞって詮索はやめるように言い、女遊びに誘う。そこで大坂藩邸の腐敗を知り、義憤にかられ、また兄も女遊びを盛んにしていたことを知る。

そして兄と親しかった遊郭の女から、兄の死の真相を探ろうとする。兄は駕籠に乗って帰る時に刺客にあったことを知る。刺客の正体を藩邸の者も何となく知っているような雰囲気で、奉行所の与力も真相を知っているが、言わない。

 当時は幕末動乱の時代で、大坂では新撰組が金集めなどに跳梁していた。その新撰組隊士と、遊郭の女をめぐってトラブルになって殺されたことがやっとわかる。
 大坂の奉行所も与力内山が新撰組に殺されたりして、関わりたくなかったわけである。弟は脱藩して、兄を殺した新撰組隊士を狙う。そして往時、福島左衛門大夫正則の屋敷があったことから名付けられた大夫坂で戦い、相打ちで果てる。

 各藩の大坂蔵屋敷の腐敗(商人と癒着しやすい構造になっていた)、新撰組が治外法権的な組織になっていったことなどが書かれている。広義の司馬遼太郎の新撰組関連作品である。