「北斗の人」司馬遼太郎 著

 『司馬遼太郎全集12 北斗の人 宮本武蔵』に所載である。北辰一刀流を立てた江戸時代後期の千葉周作のことを伝記的に書いた小説である。
 周作は陸奥の国に生まれる。百姓身分で父は馬医であったが、千葉家の祖父が北辰夢想流という剣術を編み出したとある。父もまた百姓ながら剣術を嗜み北辰夢想流を継いでいた。
 父はそれなりの山っ気がある人物として描かれている。馬医として世を送り、その次男が後の千葉周作である。大男であったようだ。小さい時から蜂を退治するなどの逸話も紹介している。蜂の巣から出る蜂を一匹ずつ棒で殺したようなことを書いているが、眉鐔の伝承であろう。また、父は村で盗賊を捕らえたことがあり、それなりに地域では大事にされていたようである。そのような縁から周作は村の名主を烏帽子親として元服する。司馬遼太郎らしく、ここで村の娘雪江を登場させる。

 父は息子の為に江戸に行くことにする。そして松戸で道場を開いていた初代浅利又四郎の元で千葉周作をあずけることに成功する。たまたま浅利は後継者を探しており、千葉周作が眼鏡にかなう。そこで養女と婚姻して浅利周作となる。この養女との絡みも書いて読者を飽きさせない。

 浅利又四郎の道場では周作が一番強いから、周作は浅利の宗家である中西派一刀流の中西忠兵衛の元に入門したく、婚家を出る。千葉家の遠縁であるという植木屋に居候し、修業する。その過程で自分なりの剣技を高めていく。ここの娘との話が後半を彩る女性で、この娘と結婚するという。

 従来の剣術の伝統芸能的なものや、宗教にも結びついて神秘性を高めた剣術理論を周作は排して、理論的かつ体系的な習得方法を考える。これが後に「技の千葉」と喧伝された元になるのである。
 
 そして剣術修業に出て、地方の道場破りをしていく。ハイライトが上州の馬庭念流との対決である。念流の門人と試合をしながら、周作のファンというか門下にしていく。その延長に、馬庭宗家と一触即発の危機を迎える。

 その後、東海道でも地方の道場を訪れ試合をして剣名を高めていく。
 そして江戸の品川で道場を開く。教え方が斬新であり、人気が出て、すぐに手狭になり神田お玉が池で道場をつくる。その横には儒学の東条一堂がいて、これもなかなかの人気学者であり、周作と意気投合する。そして学問は東条一堂 剣は玄武館として繁栄していく。千葉周作は62歳まで生き、水戸藩に抱えられ栄達するが、息子達は剣の才能はあったものの短命であった。

 当時の江戸の剣術道場は今の東京の大学のようなもので、そこでの同門のネットワークが後の尊皇攘夷倒幕に生きてくる。学生運動がおこったようなものである。また千葉周作は水戸藩に抱えられ、水戸学を学ぶ者(尊皇攘夷)に親しみやすかった面もあるのだろう。

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