「侍大将の胸毛」司馬遼太郎 著

 司馬遼太郎全集8に所載の短編の一つである。この巻の短編は戦国時代の脇役である豪傑を主人公にしたものが続く。これは渡辺勘兵衛のことを書いている。

 関ヶ原後に主君藤堂高虎の命を受けて大葉孫六が、勘兵衛に自家への仕官を勧めに行くところから物語りは始まる。この後、司馬遼太郎は藤堂高虎のことに触れるが、世渡りが上手で戦が下手のような印象を読者に与える。もちろん史実とは違うだろうが、あとで渡辺官兵衛との対立が不可欠になる伏線である。

 渡辺勘兵衛は増田長盛の侍大将として高名な武将であった。当初は中村一氏に属し、小田原攻めの時に主君の山中城一番乗りを助ける。その後、退転して増田長盛に仕えたわけだ。増田家は関ヶ原には参陣しないが、石田方であり、関ヶ原後に増田長盛は高野山に出家遁世。

 居城の郡山城を預かっていた渡辺勘兵衛は、敗戦で城から逃げる者が狼藉を働くのを防ぐ。そして城明け渡しの時に見事な応対を示し、男を上げる。この時、藤堂高虎は城の受取に出向いていた。

 大葉孫六のこの時の勧誘では返事をもらえずに、「いずれまた」となる。
 諸国を遍歴していた勘兵衛が伊豫今治に来て、藤堂家に仕官することになる。この時、大葉孫六は参勤交代の供で江戸に行っていた。留守の間、勘兵衛を世話した大葉孫六の妻が勘兵衛に関心を寄せる。性的関係には至らないが、物語に艶めきを与える。タイトルの「侍大将の胸毛」とは渡辺勘兵衛の胸毛のことだが、この女性との間で生じることからきている。物語の最期に勘兵衛が藤堂家を退転する時に、妻との話は印象的に終わる。

 さて、江戸から帰国した藤堂高虎は官兵衛に対面して、当初は8千石を提示し、断られてから2万石へと上げるが、結局、勘兵衛は藤堂家の戦での駆け引きを任せてもらうことを条件に1万石で仕官する。
 大坂夏の陣に出陣。高虎の命に背いて、当座、緊急の対応が必要な敵を討つ。これに軍令違反と高虎は怒る。藤堂隊は苦戦するが、勘兵衛隊は活躍する。この時の経緯から藤堂家から退転する。

 おもしろい短編小説である。
(全集では無く、文庫を紹介する。この短編集に収録されているとあるが、私は未確認であるので、御自分で確認してほしい)

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