「果心居士の幻術」 司馬遼太郎 著

 全集2所載の忍者物の短編である。物語は大和の当麻村の田植え時に、その田植え歌を楽しんでいた領主の弟たちが8人が、周りの人が気が付かない内に殺されることからはじまる。
 この土地の領主は筒井順慶の与力であり、これを聞いた順慶は何かを感づき、織田信長に松永弾正が謀反と伝える。信長が何故、そのように判断するのかを問うと、あのような殺人は松永弾正の元にいる果心居士の仕業と思うと述べる。

 ここで果心居士の経歴が披露される。昔、インド人の僧が興福寺に来て修業するが、女犯をおかしたことを今際の際に話す。その子が果心居士であり、長ずるに及び幻術を使うようになる。ある時、果心居士は松永弾正に出会い、その顔に浮かぶ凶相を見て、自分は悪人が好きでと申して出入りするようになる。こういう男であり、松永弾正も歓迎していたわけではないが、弾正の影となって活躍し、周りからは恐れられる。

 今回の8人の殺害も、筒井順慶の推察通り、松永弾正が信長に叛旗を翻したことから起きる。弾正は信長と戦うが、当てにしていた援軍が集まらずに窮地に陥る。
 こんな中、果心居士から松永弾正に会いたいと城の中で言づてされる。弾正が出向くと、果心居士は別れに来たという。「どこへ行く」と聞くと、「行くのはお主だ」と弾正に告げる。弾正が落城で死んだのは翌日である。
 弾正の信貴山城が落城したのは、人を信じない弾正が、実は筒井方の間者だった部下に石山本願寺への救援を依頼し、その者が筒井方に連絡し、筒井順慶が本願寺からの援兵と偽って派遣した部隊を城の中に入れた為である。

 この後、信長が伊賀を掃討した時、順慶も参戦し、その時、伊賀の砦にいた果心居士を逃がす。その御礼として砦の絵図をくれる。それで順慶は手柄をたてる。

 信長が本能寺に倒れた時、順慶は明智方に味方しようとする。この時、順慶の重臣に乗り移った果心居士が現れ、光秀は死ぬと告げる。順慶は果心居士の言う通りにはせずに、しかし光秀にも加担せずに洞ヶ峠で日和見をする。

 秀吉の天下になったある日、秀吉から順慶の元にいる果心居士の幻術を見たいと所望される。順慶は自分のところにいるとは気が付かなかったが、探すと出てくる。秀吉の眼前で術を見せようとするが、その中に果心居士にとって気に掛かる山伏のような人物が一人いた。秀吉に頼んで、この者を御前から下げて貰おうとするが、許しが出ない。それでやむを得ずに術をかけるが、この一人が醒めていて、この男に別の場所で術をかけていたところを殺される。

 これも「飛び加藤」と同様に、集団催眠術的な術であり、読んでいてもピンとこない話だが、有名な順慶の「洞ヶ峠」の逸話が思わぬ形で紹介される。

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