「最期の伊賀者」 司馬遼太郎 著

 全集2に所載の短編である。江戸幕府が成立し、伊賀忍者も服部半蔵以下、200人が御家人として幕府に傭われる。
その棟梁の服部半蔵正成が逝去し、跡を継いだのが半蔵正就である。正就は忍者というより大身の旗本で五千石の身分に安住し、妻も松平定勝の娘という身分になる。

 正就の屋敷に奇異なことが次々に起きる。これらに関して、正就は配下の伊賀者の嫌がらせだと感づく。特にヒダリと異称を持つ野島平内の仕業と推測している。

 確かにヒダリが忍術の技を使って悪戯をしていた。ヒダリは仲間の和田伝蔵の家を訪ねる。伝蔵は妻帯して子どもがいる。一方、ヒダリこと平内は独身である。妻帯した仲間が大半になり、その者どもは昔の伊賀者の生活から、幕府御家人の生活になじみつつあった。平内は昔ながらの伊賀者気質だった。そしてヒダリは今の服部半蔵正就が伊賀者の統領にはふさわしくないと思っている。

 仲間の喰代ノ杣次(野島道秀)を誘い、変装して2人で半蔵正就が辻斬りをしているなどの流言飛語をまき散らす。

 一度、ヒダリは正就の屋敷に呼び出され、詰問され、成敗されそうになるが、忍術で逃れる。

 ある時、伊賀組同心の生活が苦しい中に、半蔵正就は再度の普請を命じてきた。これには伊賀組一同も耐えきれず、目付に半蔵正就の非違を訴えることになる。半蔵正成の菩提寺の西念寺に一堂が立て籠もり、一揆の名目人はヒダリこと野島平内となる。

 慌てた幕閣は半蔵正就を呼び出すが、登城しない。一方、一揆衆には態勢を解けと命じ、一揆衆は従がったので、幕閣は半蔵正就が松平定勝の娘婿だが、一揆衆の方に同情的になり、結局、普請の儀は取りやめとなる。名目人のヒダリは死罪となるが、忍術を使って逐電する。

 半蔵正就はヒダリを憎み、有るとき、ヒダリと思い、通りがかりの武士を殺すが人違いとわかる。辻斬りの噂もあり、服部家は改易となる。

 その後、妻の縁で、大坂の陣の時は松平定勝の陣を借りて出陣するが、天王寺口の合戦で行方不明となる。死体も無く、結局は臆しての逃亡となり、服部家は潰される。
 ヒダリの仲間だった和田伝蔵は、これはヒダリの仕業だと推測する。

 ヒダリが2代目の服部半蔵正就を憎むに至った経緯が、短編だから十分に説明されないが、面白い小説である。


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