「尻啖え孫市」 司馬遼太郎著
司馬遼太郎全集8の「尻啖え孫市」である。読みやすい小説だが、自治会からみの仕事が多く、なかなか時間がとれなかった。
紀州雑賀の鉄砲隊を率いた雑賀孫市を主人公にした痛快な時代小説である。時代小説と書いたが、雑賀孫市は実在した歴史上の人物であるから歴史小説でもいいのだが、ほとんど事績がわからない人物である。それを司馬遼太郎が女好きで鉄砲の腕はもちろん、腕力も強く、権力欲の無い快男児に仕立てている。女好きと言っても、カラッと明るい女好きで、理想の女性を求めて、それだけが生きがいのような男にしている。
司馬遼太郎全集を再読して改めて思うのだが、主人公への魅力的な女性の絡ませ方に意を配っていることを認識する。
この小説では、カラッと明るい女好き孫市は、好ましい女性を種々の観音に例えて女性遍歴をするような人物にしているから、孫市の行動の節々に魅力的な女性を沿わせてくる。
読者に読んでもらうためのテクニックでもあると思う。昭和38年~39年に「週刊読売」に連載された小説という側面もあったのであろう。
孫市が京都に出向いた時に見かけた女性(それも足先だけ)に憧れ、それが織田家の息女と聞いて、岐阜の城下に来るところから小説は始まる。ここで木下藤吉郎に会う。藤吉郎が信長と諮って、織田家の親戚筋の娘を、孫市が顔を見ていないことを幸いに、仕立て上げる。その娘を京都に出向かせて、それらしくする傍ら、織田の朝倉攻めに孫市を誘う。浅井の裏切りで退却するが、その殿戦を申し出た藤吉郎に協力して戦う。そして京都で憧れの女性に会うが、偽物だったことを知り、織田家と絶縁して、紀州に戻る。
紀州では一向宗が力を増している。そして孫市が京都で見初めた女性は紀州の名門、紀家の姫と知る。孫市は宗教など大嫌いな男であるが、姫は浄土真宗を信仰しており、その姫も参加されるという聞法の集会に出る。
そこで浄土真宗の説法僧法専坊信照に出会い、僧が姫との仲立ちをする。というのは石山本願寺が信長との戦いに備えて雑賀孫市を大将に迎えたいと考えていたからである。孫市は茶席で姫と会う。ただ姫は孫市より、法専坊の方に好意を持っていると感じる。
堺に出向く場面になる。懇意の鉄砲鍛冶のところで、そこの養女で種子島家の血を引く女性に出会う。この鉄砲鍛冶も、その養女も本願寺門徒であり、孫市の本願寺側への参戦を希望していた。
堺で藤吉郎に再会し、藤吉郎から信長の堺代官が孫市の命を狙っているという情報をもらう。その暗殺者と戦う。
養女を連れて紀州に戻り、本願寺の為に戦うことになる。養女は種子島家の血を引いているので鉄砲女神のような位置づけで、雑賀衆のまとめ役となる。
石山合戦は孫市の鉄砲隊のおかげで信長の攻撃を跳ねかえす。一度、朝廷の仲立ちで講和を結んだのは、孫市のアイデアであるような小説になっている。
その後も信長と戦い、時には孫市が信長を狙撃するが、信長勢力は拡大していく。本願寺は信長と和を結び、石山本願寺を退去する。紀州攻めを防いだが、脚を負傷する。後に、孫市は家督を譲り、堺で隠居する。
その後、信長は本能寺で死に、秀吉が天下をとる。、秀吉と家康の争いの時に、秀吉側から味方につくようにと要請されるが、隠居であり、判断は国元に任すとした。秀吉側から雑賀へ説得に来た使者は態度が大きく、徳川方につくことになる。秀吉と家康が講和後に、雑賀も開城する。藤堂高虎が秀吉が会いたいと言っているとのことで、粉河寺に出向くが、ここで孫市は死ぬ。
「尻啖え」とは孫市の捨て台詞である。
(全集ではなく、文庫本をリンクする)
紀州雑賀の鉄砲隊を率いた雑賀孫市を主人公にした痛快な時代小説である。時代小説と書いたが、雑賀孫市は実在した歴史上の人物であるから歴史小説でもいいのだが、ほとんど事績がわからない人物である。それを司馬遼太郎が女好きで鉄砲の腕はもちろん、腕力も強く、権力欲の無い快男児に仕立てている。女好きと言っても、カラッと明るい女好きで、理想の女性を求めて、それだけが生きがいのような男にしている。
司馬遼太郎全集を再読して改めて思うのだが、主人公への魅力的な女性の絡ませ方に意を配っていることを認識する。
この小説では、カラッと明るい女好き孫市は、好ましい女性を種々の観音に例えて女性遍歴をするような人物にしているから、孫市の行動の節々に魅力的な女性を沿わせてくる。
読者に読んでもらうためのテクニックでもあると思う。昭和38年~39年に「週刊読売」に連載された小説という側面もあったのであろう。
孫市が京都に出向いた時に見かけた女性(それも足先だけ)に憧れ、それが織田家の息女と聞いて、岐阜の城下に来るところから小説は始まる。ここで木下藤吉郎に会う。藤吉郎が信長と諮って、織田家の親戚筋の娘を、孫市が顔を見ていないことを幸いに、仕立て上げる。その娘を京都に出向かせて、それらしくする傍ら、織田の朝倉攻めに孫市を誘う。浅井の裏切りで退却するが、その殿戦を申し出た藤吉郎に協力して戦う。そして京都で憧れの女性に会うが、偽物だったことを知り、織田家と絶縁して、紀州に戻る。
紀州では一向宗が力を増している。そして孫市が京都で見初めた女性は紀州の名門、紀家の姫と知る。孫市は宗教など大嫌いな男であるが、姫は浄土真宗を信仰しており、その姫も参加されるという聞法の集会に出る。
そこで浄土真宗の説法僧法専坊信照に出会い、僧が姫との仲立ちをする。というのは石山本願寺が信長との戦いに備えて雑賀孫市を大将に迎えたいと考えていたからである。孫市は茶席で姫と会う。ただ姫は孫市より、法専坊の方に好意を持っていると感じる。
堺に出向く場面になる。懇意の鉄砲鍛冶のところで、そこの養女で種子島家の血を引く女性に出会う。この鉄砲鍛冶も、その養女も本願寺門徒であり、孫市の本願寺側への参戦を希望していた。
堺で藤吉郎に再会し、藤吉郎から信長の堺代官が孫市の命を狙っているという情報をもらう。その暗殺者と戦う。
養女を連れて紀州に戻り、本願寺の為に戦うことになる。養女は種子島家の血を引いているので鉄砲女神のような位置づけで、雑賀衆のまとめ役となる。
石山合戦は孫市の鉄砲隊のおかげで信長の攻撃を跳ねかえす。一度、朝廷の仲立ちで講和を結んだのは、孫市のアイデアであるような小説になっている。
その後も信長と戦い、時には孫市が信長を狙撃するが、信長勢力は拡大していく。本願寺は信長と和を結び、石山本願寺を退去する。紀州攻めを防いだが、脚を負傷する。後に、孫市は家督を譲り、堺で隠居する。
その後、信長は本能寺で死に、秀吉が天下をとる。、秀吉と家康の争いの時に、秀吉側から味方につくようにと要請されるが、隠居であり、判断は国元に任すとした。秀吉側から雑賀へ説得に来た使者は態度が大きく、徳川方につくことになる。秀吉と家康が講和後に、雑賀も開城する。藤堂高虎が秀吉が会いたいと言っているとのことで、粉河寺に出向くが、ここで孫市は死ぬ。
「尻啖え」とは孫市の捨て台詞である。
(全集ではなく、文庫本をリンクする)