「佐藤優子 ソプラノリサイタル」於紀尾井ホール

昨夜、妻と標記のリサイタルに出向く。地元の隠れた文化人である知人の推奨である。
第1部は佐藤氏がロッシーニ、ベッリー二、ドニゼッティ、ヴェルディの作曲した歌曲を2曲ずつ歌う。歌曲の歌詞は翻訳されて舞台両脇のスクリーンに表示されるが、愛をテーマに恋しい思いを歌ったり、揺れ動く自分の心境を歌い上げるような歌だったと記憶している。同じような調子の歌が多いと感じるが、歌声は声量もあり、高音部とはこちらの耳が震えるような感じがし、自宅でCDで聞くのとは大違いである。ベッリーニの「私の偶像よ」という曲が短いが曲調が違い印象に残っている。印象に残ると言っても音楽に疎い私には音の印象は再現できず、どんな曲かは説明はできない。

第2部はオペラ『ランメルモールのルチア』(ドニゼッティ作曲)から、テノール古橋郷平、バリトン上江隼人の両氏に賛助出演していただき、歌劇仕立てである。
これが良かった。主人公ルチアの感情も歌声に乗せているのか、心に響く。耳に響くだけでなく、心も響くのだ。
長時間、主人公の感情が伴う動作を行いながらの歌唱であり、また座ったり、寝たりしながらの発声などは技術的にも体力的に大変なのだと思う。アンコールの拍手は鳴り止まないが、私も拍手はしても、他の会場の演奏時とは違って「お疲れさま、もう歌わなくてもいいから、本当に良かったよ」との気持ちである。
そういう歌唱の技術だけでなく、気持ちを乗せての歌唱であり、見事だと感心した。以前に妻とオペラのDVDを家で10作品以上観たが、全然印象が違い、帰りに「今度、生のオペラを高い金を出して観に行くか」と語り合う。
今回のオペラは場面の一部分だけを抜き出したものだが、全体のストーリーは「ロメオとジュリエット」のように、対立する家の姫と王子が恋に落ち、悲劇に繋がるという物語である。家でオペラの作品群を観た時もテーマは「愛、恋」ばっかりだと思ったことを思い出す。日本の歌舞伎では、愛、道ならぬ恋もあるが、主君への忠義、関係先との義理立て、親子の情、金銭のしがらみなどが入り込む。もっともオペラにも、このようなものがあり、当方が知らないだけなのであろうか。

テノール古橋郷平、バリトン上江隼人の両氏が掛け合うように歌うところも良かった。またピアノは今回のリサイタル全てを服部容子氏が演奏されたが第2部のオペラの場面ではオーケストラ並みに、その情景にあった音楽を、なめらかに、かつ強弱の付け方も歌を損なわないようにしながらも自信に満ちて弾かれており見事であり、妻が「このピアノの方も凄いわね」と言ったが同感である。

なお佐藤優子氏は平成27年度に五島記念文化賞の新人賞を受賞し、平成29年度新進芸術家海外研修制度研修員としてイタリアで勉強・修業している。このコンサートも五島記念財団(現在は東急財団)が後援している。また過去の五島記念文化賞の受賞者には知られている人としてテノールの錦織健氏、ソプラノの森麻季氏がいる。今回出場の上江隼人氏も受賞者である。佐藤優子氏の今後の大成を期待したい。