「戦国大名の遺宝」 五味文彦 監修

この本は以下の10章ごとに、その分野に詳しい専門家が著述し、それらをとりまとめたものである。見て頂いてわかるように、少し変わった歴史遺産を取り上げている。各章の内容に精粗がある感じもするが、それなりに興味深い。
「1.甲冑具足」、「2.装束と調度品」、「3.旗印」、「4.狩野派の絵画」、「5.読書と漢詩」、「6.戦国大名と茶道」、「7.囲碁・将棋」、「8.城郭」、「9.合戦図屏風」、「10.井伊家の遺宝」である。

「1.甲冑具足」では戦国武将が個性を生かして様々な意匠の甲冑を身につけていたことがわかる。兜の色々な種類の解説もあり、基礎知識を得るのにもよいし、各武将の甲冑を知るのにも良い。加藤嘉明の「黒漆塗仏胴具足」も面白い。南蛮の影響を受けた兜も広く使われていたことがわかる。
「2.装束と調度品」では辻が花染の胴服や武将の陣羽織、南蛮風の外套など、各武将の斬新なデザインに驚く。加藤清正の「蛇の目紋羅紗陣羽織」は、蛇の目が赤と黄であり、地は黒という鮮やかさである。豊臣秀吉の「黒黄羅紗地富士御神火文陣羽織」も、富士の御神火のデザインが面白いし、色も黒と金で鮮やかである。武将が使った刀剣と外装も紹介され、また馬具、采配、軍配、法螺貝、背負太鼓なども出ている。
「3.旗印」では大将の所在を示すのが馬印と解説されてきたが、旗印と区別がつきにくく、著者は旗の形をしたのが旗印で、そうでないのが馬印としている。屏風などから各武将の旗印を示している。神仏系と紋所系、記号、図形系などもある。

「4.狩野派の絵画」では狩野永徳(豪壮、華麗)、山楽(生命感あふれる動感表現)、探幽(繊細、優美)などを解説している。
「5.読書と漢詩」は北条早雲が家訓で少しの暇があれば物の本を読むことなどを書いている。そして禅需一致で儒教の本も読み、また連歌などを行う為に王朝文学も読んだことを記している。漢詩は信玄や謙信、伊達政宗が知られている。
「6.戦国大名と茶道」では当時の社交に茶道は不可欠であり、名物道具が贈り物に使われていることを書いている。
「7.囲碁・将棋」は、これまであまり紹介されることはないが、当時の武将に愛好されたことを記している。取った駒が使えないが駒数が多い中将棋も行われていた。駒の製作では公家の水無瀬家が家業とし、囲碁、将棋の専門家も生まれ、これらの人を招くことによる情報収集の役割もあったのではと書く。
「8.城郭」では現存する城の天主を一つずつ解説していて「なるほど、こういう視点があるのか」と感じるところがある。
「9.合戦図屏風」は現存する合戦図屏風に即して場面を解説し、「10.井伊家の遺宝」は井伊家という大名家の視点から以上のような各種遺宝を解説している。