「日本人の歴史観」 岡崎久彦 北岡伸一 坂本多加雄

これは雑誌『諸君』に掲載された3人による鼎談をまとめたものである。副題に「黒船来航から集団的自衛権まで」とあり、近代日本史を語り合っているものである。
保守の論客の話であるが、ある程度の近代史の知識が無いと内容の理解が難しい本である。また鼎談をまとめたものであり、論理が飛ぶところもあり、読み難いところもある。

この本のタイトルにも歴史観という言葉が出てくるが、色々な史観を批判している箇所があるが、私には、こんな史観があったのだという驚きがある。例えば「憲政史観」は自由民権運動は公武合体論の流れであり、土佐藩を中心としてた公武合体論から自由民権運動につながるというものだそうだ。また「薩長史観」は明治維新により、それまで続いてきた暗く長い封建時代が終わり、一気に夜が明けて明るくなったとする歴史観とのことだ。だから民党が出て、大正デモクラシーの時代は乱臣賊子が出た時代となる。

また「佐幕派史観」は、幕府側に立ち、開国など幕府の政策に積極的な意義を見出す歴史観とのことである。もちろん、「マルクス主義史観」もあり、これはラディカルであればあるほど歴史的に重要な出来事と考えるきらいがあるようだ。
「占領史観」とは、アメリカの占領のお蔭で日本は民主化したというものである。

巷では司馬史観という司馬遼太郎の歴史の考え方を言う言葉もある。私は司馬遼太郎の歴史小説は好きだが、小説家の考えたストーリーを本当の歴史と思い込んで信じることが理解できないし、それにわざわざ司馬史観なんて言ってレッテルを貼ることもおかしいと思う。
上記史観も、それぞれの歴史を見る視点であって、良い悪いの問題ではないと思うのだが。

この本で、時代ごとに、その時の当事者の行動を評価している。例えば小村寿太郎はあまり評価しておらず、陸奥宗光、津田出などの紀州の人物を評価している。また原敬は高評価で、宇垣一成、田中義一もそんなに悪くないと評価している。なお満州事変の関東軍司令官の本庄繁を男爵にしたのは間違いだったとする。すなわち命令無視して独断専行をした人物を評価したことでおかしくなったとする。
また斎藤隆夫の反軍演説を高く評価している。
なお近衛文麿、広田弘毅、杉山元の人物評価には厳しい。抑えることができた立場なのに無為に過ごしたということである。ただし、この3人の死に方はそれなりに立派だと評価している。日本の近代史に興味を持つ人には参考になる本だろうが、私はあんまり面白くなかった。

戦後政治についての評価の方が興味深く感じられるところもある。
ともかく3人の論者の基本の論調は保守であり、私は違和感がないが、反感を持つ人もいると思う。



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