「語り継ぐこの国のかたち」半藤一利 著

この本は著者が色々な雑誌等で発表したものを取りまとめた本である。表題に含まれる「この国のかたち」とは司馬遼太郎の造語であり、評論である。それを借りて、老齢になった著者の思いを書いたものをまとめている。
著者の言わんとするところは次の通りである。「2度と戦争をするような国になるな」、「政治家は正しく、国の現在及び将来の本当に為になることを実施する信念を持て」、「世の動きに迎合せずに常に正しいことを言う勇気が必要」、「言論の自由が社会を健全にしていく鍵だから大事にしろ」、「本当の知識人とはどのような人物かを小泉信三を例にして説く」、「日本、及び日本人の美点を大事にして後世に伝えていけ」、「歴史を学ぶのは過ちを繰り返さないために大事」ということである。
これらを事例を交えて具体的に説いている。

戦争にからんでは、統帥権の問題、当時の参謀の無責任体質(服部卓四郎、辻政信)などを司馬遼太郎との対話の中などから書いている。

信念を持った政治家として例に上げたのは陸奥宗光のことである。また世に迎合せずに正論を吐き続けた石橋湛山のことを書いている章などが参考になる。
小泉信三のことだが、人に面と向かって言えないことを、言論の自由の美名のもとで書いてはいけないと述べられていたそうだ。

司馬遼太郎のことも日本、日本人の美点の章で書いており、彼が晩年に嘆いていたことが記されている。また晩年にノモンハン事件のことを取材していた事実を明らかにして、その執筆を断念した理由なども参考になる。須見新一郎連隊長(小松原道太郎師団長の無謀な命令を拒否したこともある)という見識のある軍人を取材していたが、司馬遼太郎と瀬島龍三がどこかで親しげに対談されている記事を見た須見氏から、あんな人物と付き合っている人との取材は拒否するし、これまでの取材内容も無かったことにしてくれと言われたようだ。

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