「ペンシルワーク 生の深い闇から」 木下晋 著

鉛筆を使い、精緻と言う表現を超えて、内面まで刻み込み、抉るような絵を画く木下晋の画文集である。木下氏が折に触れて、新聞、カタログ、雑誌などの発表した文章をまとめ、それに書き下ろしの文章も織り込んで編集されている。

絵の方は、厚手の紙質のページで、多く掲載されている。木下氏がモデルとして取り上げた人は、最後の瞽女として人間国宝にもなった小林ハルさん、貧苦の中で画家を育ててくれた母・木下セキさん、佐渡の相川町の一軒家をアトリエとして画家に貸した家に住んでいた小杉ハツさん、神戸に住み、夫はニューヨークやパリで著名人とも親交があった写真家中山岩太氏の奥さんの中山正子さん、谷崎潤一郎の『痴人の愛』のヒロイン・ナオミのモデルともされている和嶋せいさん、村山槐多の代表作「バラと少女」のモデルの相良キミさんや、美術評論家で画家と親交があった洲之内徹氏夫妻などである。

これらのモデルとなった方の人生にも触れてエッセイとしている。いずれも重く、深い人生を送ってきた人であり、それらの人々の人生の重みを、刻まれた皺の一本一本を描くことで描写して、鬼気迫るものがある。

また、画家の故郷の冨山の呉羽山山麓、画業の挑戦に出向いたニューヨーク、それからインドの貧民窟に出向いた旅のことにも触れている。

著者が影響を受けた詩人滝口修造氏の思い出や、指導を受けた大滝直平氏、無名時代に絵を買ってくれたY氏(銅器の梱包職人)、前衛舞踏家の土方巽氏の夫人で自身も舞踏家の元藤燁子氏や匿名のコレクターのことも記している。

著者の印象に残っている芸術家である陶芸の加藤正義氏、夭折の画家・保多棟人氏、同じく神田日勝氏、田畑あきら子氏、著名な現代美術家・荒川修作氏、メキシコ人画家シケイロス、ノルウェーのサビエ氏の出会いや思い出も記されている。神田日勝氏以外は作品を知らない芸術家であり、機会を見つけて拝見したいと思う。

また信濃デッサン館の窪島誠一郎氏のことにも触れているが、私がこの本を購入したのはある画廊で窪島氏と木下氏が同席された場であった。私は木下晋氏の鉛筆画を2枚所有しているが、それをそこで購入したから画廊主が呼んでくれたわけだ。この本はその時ではなく、その後での購入だ。この時は窪島氏の本を購入している。


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