「私家版 大きな時計」 舟越保武 著

昨日、本箱を整理していたら、標記の本が出てきた。外箱に入っていて、中の本にはパラフィン紙もかかったままで、読んだような痕跡も無い本である。
私は舟越保武の良いデッサンを所有しており、その縁で購入して読んだ本だと思うが、改めて再読した。この人は彫刻家が本業であるが、文章においても、「巨岩と花びら」というエッセイで、日本エッセイスト・クラブ賞を授与されている。

本のあとがきを読むと、この本は1986年に日経新聞に25週にわたって掲載したエッセイをまとめたものである。そして私家版とは著者が2002年に逝去された時に、ご家族がお世話になった方への御礼として、デッサンを多く入れ、装幀も変えて出版されたものとある。だから定価も無い。ちなみに所載されているデッサンは著者が1987年に脳梗塞を患い、右手が利かなくなってから描いたものと、奥様のあとがきにある。

私は、古書店から購入したのだろうが、そんな経緯もまったく記憶にはないが、2004年5月15日の郵便局の4500円の払込受領証が挟まっていた。

タイトルになった「大きな時計」は収められている一つのエッセイの題から採られたのであろう。著者は俗な言葉で言うところの落ち込むことが多く、その時に「大きな時計も小さな時計も、どっちも時間は同じだ」との言葉などを思い出して心を整えるようなことが書かれている。

このように著者の生活、身の周りの出来事に関して、著者の考え、思いを綴っている。言葉などはあてにならないが、眼の表情に、その人の心が全て出るというとも記されている。

また彫刻家らしく、人間の表情を似せる為には、後頭部をしっかりと似せて作らないとうまく行かないとも書いてある。
人間は動物より優れているようなことを言っているが、顔などは動物の方がいいとも書いてある。そしてただ人間が美しいのは手指とも述べている。

老いて目立ってくる皺についても記しており、肘の後ろの皺などに本当の年齢は出るなど観察が細かくて興味深い。

作品と同様に、ストイックで心のきれいな人(あるいは心をきれいにしようと常に意識していた人)だったことが理解できる。

(リンクした本は私家版ではない)

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