「ギリシャ人の物語Ⅲ」塩野七生 著

第Ⅲ巻は「第1部 都市国家ギリシャの終焉」、「第2部 新しき力」の構成である。
「第1部」ではスパルタがペロポネソス戦役に勝つが、スパルタの覇権はギリシャに前向きな影響を何ももたらさなかったことを書いている。
スパルタは軍事最優先の国、その軍事は最上位の階級のもので、階級制をあくまでも維持する国である。そして軍事以外の文化的なことは何もない。その軍事も最上位階級の軍事(=戦争)による消耗を防ぐ為に市民兵よりも傭兵が活躍するようになる。内部の身分格差はそのまま残るから、階級間対立に常に神経を使い、スパルタだけのことが優先でギリシャ各都市への影響力はない。そして外交的にはペルシャと結ぶようになり、ペルシャの傭兵になったりもする。

一方、負けたアテネは海軍力が削がれ、その結果、通商の利益も失い国力を低下させ、政治でもスパルタ寄りの人物が登場するような衆愚政治となる。

ここでソクラテス裁判のことを記している。考えることの大切さを訴えて人物だが、この書ではプラトンの著作を読むことを推奨して、あまり詳しくはわからない。

その後、テーベにペロピダスとエパミノンダスという2人の人材が現れる。軍政も改革し、騎兵の力を活用して、レウクトラの会戦でスパルタの主力軍を破る。その後、全ギリシャを二分するマンティネアの戦いでテーベ方はスパルタ・アテネ方と戦う。テーベ方が優勢だったが、指揮官のエパミノンダスが戦死し、その勝利を確定できないまま終わる。
このテーベに、同盟したマケドニアから王子のフィリッポスが人質として送られてくる。彼はテーベの軍事を学んでおり、紀元前362年に23歳のフィリッポスがマケドニアで王位につく。

「第2部 新しき力」はマケドニアの王フィリッポスとその息子で後にアレキサンダー大王と呼ばれるアレクサンドロスの物語である。
フィリッポスは王位争いに勝ち、軍事上の改革をする。マケドニアの重装歩兵はファランクスと呼ばれる。農民層まで対象を広げ、槍(サリサ)をスパルタの槍の2倍近い6.5㍍にし、これを2つ折にして持ち運びやすいようにした。そして密集隊形をさらに大型化した。

フィリッポスにはパルメニオンという18歳年長の補佐役がいて軍事を司った。農地改革も実施して、鉱山の経営にも関心を寄せて国力を増強していく。
そしてギリシャで生じた神聖戦争(神託で有名なデルフォイをめぐる都市間の争い)に乗じてテッサリア地方を傘下にする。
この時、アテネでは憂国の士のデモステネスがマケドニアの危険性を訴える。
この戦争でマケドニアが勝ち、アテネには寛大に、テーベには厳しく対処した。スパルタは自国に引き籠もった。コリントの講和会議でマケドニアがギリシャの実質的な盟主になり、ペルシャに対峙することになる。

フィリッポスはアレクサンドロス(アレキサンダー大王)の母のオリンピアスを離婚して再婚した。その結婚式の場でアレクサンドロスは再婚者の親族のアッタロスと喧嘩し、それに父が怒り、家出する。
フィリッポスは紀元前336年に暗殺される。46歳である。この時、アレクサンドロスは20歳である。

アレクサンドロスは父からスパルタ人レオニダスという教師を付けられ、厳しい肉体訓練をしていた。そして一方で哲学者のアリストテレスに師事していた。これらに学友がおり、彼等が後に軍事面の指揮者(将軍)となってアレクサンドロスを助けることになる。

アリストテレスは次のことを教えたとあるが、参考になる。①先人達が何を考え、どのように行動したかを学ぶこと(これは歴史、すなわち縦軸の情報),②日々もたらされる情報(横軸の情報)、③これら情報に対して偏見なく冷静に受け止める姿勢の確立と、情報に基づいて自分の頭で考え、自分の意志で冷徹に判断し、実行すること。
本は母からホメロスの叙事詩『イーリアス』を薦められ、愛読書として影響を受ける。

遊び友達の一人がヘーファィスティオンで生涯の友となる。また誰もが乗りこなせない駻馬のブケファロスも彼の生涯を支えた。

彼の初陣は神聖戦争の時にカイロネアの会戦で、騎馬隊で突っ込み、勝利に貢献する。

以降は痛快なアレクサンドロスのペルシャからアジア、エジプトへの遠征物語である。遠征した経路、距離を見ると、若いからだと思うが凄いものである。
戦術は騎馬隊を菱形に構成して、その頂点(ダイヤの切っ先)に立って敵中に突っ込むのがアレクサンドロスである。このような大将自らが先頭に立って突っ込むのは他に無い。
3万の歩兵に5千の騎兵という兵種構成である。遊び友達・学友の各隊の指揮官との意思疎通も見事なのがアレクサンドロスの戦闘である。
記録者、通訳要員、技師集団、それに医師集団を連れての遠征で、ペルシャを滅ぼし、エジプトを征服し、インドのインダス川まで進出する大遠征を行う。

彼の戦いを次々に書いてあるが、私なりに勝因をまとめると、次の通りである。
①敵の情報を集めるのに熱心で、それをもとに考えるのはアレキサンドロスただ一人である、②アレキサンドロスの考えを理解して、指示通りに兵をまとめあげる腹心の優れた将軍たちが揃う、③従来とは違った兵種、陣形による戦闘、特に騎兵の活用、④補給の重視(新兵の補充も含めて)、⑤勝者の寛容、武士の情けを持っており、敗者の活用もできたこと、⑤アレキサンドロスの若さ(若くなければあれだけの大遠征をできない)

他の将軍と違って先頭で戦うから、負傷もするが、これは凄いことだと思う。

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