観楽読楽−観て楽しみ、読んで楽しむー

アクセスカウンタ

zoom RSS 「刀鍛冶考」 小笠原信夫 著

<<   作成日時 : 2019/03/15 20:39   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

小笠原信夫先生が東京国立博物館の「MUSEUM」(ミュージアム)や展示会カタログ、「東京国立博物館紀要」などに寄稿された論文をまとめたものである。
「江戸の新刀鍛冶」の章では小笠原先生のご指示で、私が先生の近著などの記述を生かして加筆している。

収められているのは「大坂新刀鍛冶・河内守国助考」「江戸の新刀鍛冶」「備前長船鍛冶 右京亮勝光・左京進宗光の性格」「小柄小刀私考」「出羽大掾国路に関する一私考」「埋忠明寿とその周辺」「長谷部国重についての一考察」「備前長船鍛冶の研究」「新藤五国光に関する一考察」「備前大宮鍛冶の系譜に関する問題」「山城鍛冶了戒・信国考」「室町時代刀剣の様相」「龍門延吉に関する一考察」「『古今銘尽』開版の諸条件」の論文である。

各章ごとに内容を紹介していくと量が多くなるので簡単に紹介したいが、従来の「刀の研究」=「真偽、作風という鑑定中心」という本阿弥家のようなスタイル(本阿弥はここに価値評価も入るが)を脱却して、当時の時代背景などから踏み込んでおられる。

鑑定中心だと、作風が違うと別人にして、すなわち二代があったというようになる。「備前長船鍛冶の研究」では従来の長光二代説を、当時の他分野における襲名の習慣等などから否定されている。当時の大御所本間薫山氏などは二代説も受容する立場であり、先生の立場で、このような論を発表するのはご苦労があったと思う。
ちなみに藤代松雄先生も作風は同じ人物だからこそ変えていくものだと主張されており、今では一代説が主流になっていると思う。ピカソにしても作風をどんどん変えているのだ。
なお、藤代松雄先生の研師的な眼の研究を小笠原先生が時代背景等の視点から裏付けられているような研究も多いと感じる。「備前大宮鍛冶の系譜に関する問題」で論述されている銘字における逆鏨の系列なども、そうだと感じる。

もちろん、鑑定的な研究もなさっており、「埋忠明寿とその周辺」では天正、文禄年紀の「城州埋忠」銘の作刀を作風を比較することで、明寿とは別の父・明欽の作品と推測されている。
そして、埋忠一派は京都で本阿弥家と密接なつながりを維持して刀装具の製作にあたって栄えていたが、本阿弥家が江戸に移った時に京に残ったが故に、吉岡家などに仕事を奪われ、衰退したと歴史的背景から分析されており、参考になる。

ただし、歴史的事象を刀剣の研究に取り入れられていても、刀鍛冶のことなど史料は残っておらず、先生も苦労されている。「備前長船鍛冶の研究」で、長光の時代に他分野でも襲名が行われていないことを説明されているが、この前の時代からの友成、正恒の同名で多様な銘ぶりの鍛冶の出現や一文字派の刀工銘の説明では「慕っての名乗りでは」とか苦労されて解説されている。残された課題である。

「新藤五国光に関する一考察」「山城鍛冶了戒・信国考」では多様な銘ぶりの新藤五国光や信国の銘字図版を提供されており、それらが真と是認されている中での研究は大変だと思う。私などはおかしいのもあるのではと言ってしまうが、お立場では言及しにくかったと思うが、精読すると、この銘ぶりが本来の新藤五かとわかるような記述である。

「『古今銘尽』開版の諸条件」では、時代を追うごとに正宗の弟子が多くなっていく状況、すなわち正宗神格化の状況をいくつかの古伝書を時代を追って分析されている。こういうことが現在の刀剣学のベースにあるだけに研究は大変である。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「刀鍛冶考」 小笠原信夫 著 観楽読楽−観て楽しみ、読んで楽しむー/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる