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zoom RSS 「考えるよろこび」 江藤淳 著

<<   作成日時 : 2019/01/29 11:45   >>

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江藤淳が各地で行った講演をまとめたものである。講演という一般の人への話であるからわかりやすいが、勝海舟に触れた講演を除いて、各講演ごとに脈絡はない。次の6つの講演が収められている。
「考えるよろこび」、「転換期の指導者像」、「二つのナショナリズム」、「女と文章」、「英語と私」、「大学と近大−慶応義塾塾生のために」

「考えるよろこび」では古代ギリシャの劇詩人のソポクレスが書いた「オイディプウス」という戯曲、エディプスコンプレックスの語源になった劇だが、この劇をみたアテネの人々は人間のあるべき姿、ものをつきつめて知ろうとする人間のおそれ、ものを考える人間が究極において持っていなければいけない勇気などを知ったとする。

ソクラテスは哲学者とされているが、フィロソフィはフィル=ものを愛する(フィルハーモニーは音楽を愛する)という言葉とソフィア(知恵、知性)が合体した言葉である。すなわち知性を愛することである。
ソクラテスはアテネの市民として出征して勇敢に戦ったこともあり、頭だけの人ではない。また裁判官を任命された時は世評に囚われずに自分の考えを通した。スパルタに占領された時、スパルタにもいいところがあると言っていたので、ソクラテスはスパルタ側に協力を求められるが拒否する。今度はアテネの復興の時代に時の政府の物質万能主義的な政策に反対し、精神の大切さを訴え、政府から睨まれ、愛国者から訴えられ罪をきせられる。アテネに留まれば死刑となるが、アテネにとどまることを選ぶ。すなわち、考えてつきつめてものごとを知ると勇気を伴う必要がある。

アメリカ議会でもリンカーン暗殺後に大統領になったジョンソンに対して、議会が反対して罷免という時に、一人の議員が賛成しなかった。彼も大統領には反対だが、三権分立の精神が犯されるのに反対して政治生命を絶った。

考えるよろこびとは自分の正体を見極め、確かめることと書くが、世間に迎合しないで自分の考えを通すことの大切さを述べている。一人では悪いことはしないが集団になると「正義」「平和」と称して暴力・悪をやるのが人間であると認識すべきだ。

「転換期の指導者像」では勝海舟のことを取り上げて高く評価している。いくつかの美点を書いているが、勝の目測の確かさを評価している視点が新鮮である。目測とは、自分が達成しようとしている仕事との距離を正しく計測し、客観的にみることで、情熱と同時にこのような打算が必要と説く。

勝は現実的な開国論を展開する。それは外国は貿易で来る、それは儲かるからだ。だから当方も貿易を行い、国を強くする。そして教育を盛んにし門閥に頼らない実力主義の人材登用をはかるというものだ。

咸臨丸の経験で、持ち場持ち場の機能的組織=近代精神を知る。帰国後、攘夷論が強い中、兵庫海軍操練所で幕臣以外も教育する。幕府の小栗上野介はフランス、薩摩長州はイギリスを頼ろうとするが、勝は近代日本を見据え、共食いを避けるようにした。
危機になると政治的舞台の正面に出て行くような人物である。江戸城明け渡しで薩長と交渉する前に海軍の力と焦土作戦(ロシア)を考えてから和平交渉にはいる。そして薩長の支えのイギリスにも、薩摩が和平を拒めば幕府は徹底的に戦う、すると横浜にも被害が及ぶと論じて、事前に根回しをして協力を求めていた。

薩長が慶喜を極刑にすると主張したが、そうなると幕臣が騒ぎ国が2分する可能性があると考え防ぐ。

明治になると身を引く。ただ明治4年の廃藩置県の時に新政府に出仕する。明治6年の時に参議になる(西郷などが下野する)。福澤諭吉に批判されるが、国内分裂の危機をかぎつけたのだと思う。

「二つのナショナリズム」も勝海舟のことを取り上げ、国民生活の安定をはかり、窓を世界に開きながら誤りなく自己実現していく開国的ナショナリズムの大切さを述べている。

「女と文章」の中では谷崎が漢語的な男の文章、源氏物語の女性的な文章と述べているのを引用して、後者で国民的文学が生まれることにも触れている。

「英語と私」は著者の自伝的な英語学習の話であり、イギリス的英語を習い、終戦でアメリカ的英語となり嫌悪感を持ったことなどを述べている。こういう違いがわかるほど勉強していたというわけだ。当初は発音を大事にする英語をならうこと。留学時の話。沖縄問題で英語で発言したが、その内容を褒められ、引っ込み思案の性格が改められたことも述べている。

「大学と近大−慶応義塾塾生のために」は慶応がストライキをやった時に学生に話した内容。福澤諭吉の話などが出てくる。

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