「日本刀大全」原田道寛 著

いただいた本である。戦前に出版された「日本刀私談」(原田道寛著)を新仮名遣いに改めて復刊した本である。出版の時点では著作権所有者も不明だったようだ。こんな形の出版ができるのにまず驚いた。なお私は古書を所有しており、一読はしていたが、今回再読した。

本は太平洋戦争前に軍刀として日本刀ブームが生じた時に出版されている。著者は新聞記者というかジャーナリズム関係の愛刀家であり、文は立つが内容は、それほどなく、刀剣に関する読み物という位置づけである。だから出版時の題名の「日本刀私談」の方がふさわしい。こういうことでタイトルを変更して、他人が勝手に出版していいのかという点にも驚きというか、怒りを感じる。

当時の愛刀家、鑑定家の状況、行動パターンを、具体的に書いているところもこともあるが、現在に復刊する意義がまったくわからない。今読んで、興味深いわけではない。愛刀家の性格類型を、だまされる愛刀家はどうだとか書いており、これはいつの時代でも同じような欲の皮のつっぱりと、素人の知ったかぶりであり、これまた、別に参考になることでもない。いつの時代でもだまされるような人は同じだからという意味での復刊であろうか。

古くからの伝書を紹介している箇所があるが、紹介している伝書が大事な史料かというと、疑問がある。刀剣のことであり、面白、おかしく脚色された話も多く、そんな話を知っていても、そうかという程度である。

古からの目利き歌とか、鑑定上の留意点の伝承などの紹介もあるが、この点に関しては現在の愛刀家の方が正確な知識を持っているのではなかろうか。

太平洋戦争前の時代であり、当時の刀剣界には、美術刀剣派のほかに切れ味重視派の対立(対立というほどでは無いが力点の置き方の違い)があったことが理解できる。今となっては、そもそも集団戦の中で、しかも銃砲が充実している時代の刀剣に切れ味を求めることのナンセンスなのだが、当時は任官した息子の軍刀として高価な刀を購入した人は多かったわけであり、そういう意味で読まれたのではなかろうか。

いずれにしても、現代にわざわざ復刊するほどの本ではない。もっと価値のある古書が刀剣界には存在する。

また装幀のカバー写真もひどい。模造刀であることが明白な刀の写真を大きくカバーにしている。酷評することになったが、私のブログの読者にはお勧めしない。

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