「日本の近世 1 世界史のなかの近世」 朝尾直弘 編

この本は、江戸時代初期の海外との交流や貿易のことが中心に書かれている本だと思ったのだが、もっと幅広く記述されていてとまどった。
「1.「近世」とはなにか」「2.東アジアにおける幕藩体制」「.「鎖国」日本の海外貿易」「4.近世民衆仏教の形成」「5.日本語の近世」「6.近世文学に現れた異国像」「7.東南アジア「近世」の開始」「8.近世イギリス社会の諸相」と別れている。そして各章ごとの著者も違う。
だから、関心が無い章も読むことになる。それはそれで面白いところもあるのだが。

1.「近世」とはなにか」は、日本史における時代区分の近世を中心に、明治期から現代に到るまでの歴史学の学問的な推移を書いている。研究者には大事なことなのかもしれないが、私には関心がない章だ。ただ、ヨーロッパの歴史区分を日本史に応用したり、戦後はマルクス主義史観(奴隷制→農奴制(封建制)→資本制)の影響が強い史観があったことなどを知る。

「2.東アジアにおける幕藩体制」では、昔の天竺(インド)、震旦(中国)、本朝(日本)の世界観から、南蛮人が来航してからの世界観の変換や、中国における明の滅亡、清の建国の影響、そして戦国時代の惣国一揆の出現(これは山城だけでなく、甲賀、伊賀、宇陀、丹波、摂津、乙訓郡、和泉、日根荘、紀伊などでも生じていた)と、その内容を紹介している。この時のムラの掟が江戸時代から現代にも生きていることが書かれている。一向一揆のことや、士農工商の語源となる侍能工商という言葉が一向宗の蓮如の文章にあること。そして都市の時代にもなっていくことや、神国思想が生まれた経緯など幅広く、近世社会の骨格になることを書いている。

「3.「鎖国」日本の海外貿易」では、銀の輸出で世界を驚かせ、その輸入品が中国の絹であり、その生糸をコントロールするのが糸割符制であることを知る。
オランダと台湾(鄭芝竜と鄭成功の親子)、琉球との絡み、そして鎖国に到ることが書かれている。当時の輸入品は生糸、真綿、絹織物、木綿や、砂糖、人参等薬種類、香木類、水銀・鉛・錫・明礬等に獣皮・鮫皮等の需要が大きかったことを知る。鹿皮は武具に使用したのだろうが、1624年には16万枚も買い付けたそうだ。

輸出品は銅、丁銀、海産物、小間物色々(銅製品、真鍮製品、赤銅製品、蒔絵製品、塗物製品、鉄製品、他)などである。

正徳以降は、銅の不足による貿易縮減期、18世紀後半からは幕府が増益をはかり、銅・俵物の官営化をはかる。
松平定信以降は、琉球ルートを利用した薩摩藩唐物八品目の長崎売り立てが琉球産物として拡大し、天保期以降は抜け荷などの不正流通も拡大する。

銅は東インド会社に莫大な富。1672~1675年まではスェーデン銅の3分の1から半分に達する量が欧州に流れる。清朝、朝鮮にも輸出。
17世紀末以降は俵物に注力。天保期以降は密売も多くなる。
日朝貿易は対馬藩が中心。輸入は朝鮮人参。中国経由の生糸が一番多い。
砂糖は元禄15年より急増。宝暦末年まで多い。後期になると輸入していた生糸が輸出品になる。

「4.近世民衆仏教の形成」では、信長、秀吉によって宗教教団が壊滅させられ、江戸時代になると、檀家制度、寺請け制などができ、俗権に従属させられる。教義が心学的な内容になり、鈴木正三などが出る。

「5.日本語の近世」ではキリシタン資料(キリシタンの平家物語や、ロドリゲスの日本大文典)と朝鮮資料(康遇聖の捷解新語)から日本語の変遷をたどっている。係り結び、敬語、丁寧語、疑問表現などを具体例にして日本語の変遷を説いている。

「6.近世文学に現れた異国像」では日本人が書いた異国の物語で、どのように異国が表現されていうかを探っている。

「7.東南アジア「近世」の開始」は東南アジア諸国の歴史を概説している。「マラッカのX」という言葉があるそうだが、マラッカ海峡から南シナ海、ジャワ海、ベンガル湾、インド洋に向かうことを言う。陸よりも海の方が輸送効率は高くなる。明の鄭和の大艦隊。それからイスラム教の進出、胡椒生産、ヨーロッパの進出、東インド会社、日本人町などのことを書いている。

「8.近世イギリス社会の諸相」は、当時のイギリス史。ロンドンが一極集中で全国人口の約十分の一で約53万人もいる。州都市が100。人口は7000人以上。その上に6~7の地方首都のヨーク、ブリストルなど人口数万の都市があったこと。伝統的な地主のジェントルマンに、町の商人ジェトルマンも融合されていく。ロンドンの社交という華やかな面があるが、一方で貧困、病気、犯罪の場所に都市がなる。イギリスは「海にゆく人々」(船乗りや水兵、貿易商人、漁師)が活動する。そして、罪人を流刑する天然の刑務所がアメリカ、そしてオーストラリアだったことなどが書かれている。


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