「日本の歴史をよみなおす(全)」網野善彦 著

この本は続編として出版された本も含めて、一冊にしたものである。従来の歴史の常識を覆し、非常に面白く、考えさせられる内容を含んでいる。
「文字について」「貨幣と商業・金融」「畏怖と賤視」「女性をめぐって」「天皇と「日本」の国号」「日本の社会は農業社会か」「海からみた日本列島」「荘園・公領の世界」「悪党・海賊と商人・金融業者」「日本の社会を考えなおす」に章立てされている。

この本の大きな眼目は、中世を農業社会、そして百姓=農民とするイメージは間違いで、百姓=多くの職業の平民ととらえる必要性を説いている。すなわち商業、金融、工業に携わる人も多く、例えば鎌倉新仏教は、これら人に支持を広げたところに立脚していたこと、商業・金融を考えると列島全部が外国との含めてネットワーク化されていたことを認識すべきだというものである。
説得力のある例証が続き、目から鱗の本であった。

「文字について」の章では、漢字、平仮名、片仮名という3種類の文字をもつ民族は珍しいとして、中世から江戸期にかけて識字率は女性でも高かったと書く。地方の方言はわからないが、文書は共通していて、時代ごとの特色がある。
片仮名は口頭で語られる言葉を表現に使用し、口頭=神仏とかかわりを持つから、起請文、願文、託宣記などに使われる。
平仮名はまず女性の世界で使われ、これが世界でも稀な女性文学、女流文学を生む。14世紀までである。男性も私的な文書で平仮名を使いはじめる。相続の譲り状などだ。新仏教は庶民への布教を本気でした。だから平仮名を使う。

「貨幣と商業・金融」の章では、13世紀後半から14世紀に、宋から輸入の金属貨幣が本格的に流通。市は無縁の場で、ここを通すことで以前の所有者との因縁もなくせる。利息の元は出挙。最初の稲は初穂として神に。初穂は種籾として農民に。農民は秋の収穫後に種籾に神へのお礼の利稲をつけて蔵に戻す。こうして神人などが金融を行う。商工業者は天皇、寺社に特権の保証を求め、15世紀になると、守護大名のような世俗的権力にそれを求める。

鎌倉新仏教は商業、金融の結びつきが強い。また律僧は活発に勧進し、宋との貿易利益も使う貿易商人。禅宗も同様。荘園の請負人にも禅宗の僧や神人が関与。

以下、長くなるから、ここでやめるが、こんな調子で面白い視点が披露されていて、大変、勉強になる。

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