「信濃デッサン館20年」 窪島誠一郎 著

最近、吉岡憲のデッサンを購入したので、この本を思い出して読んだ。再読である。信濃デッサン館、無言館の館長である窪島氏の本である。はじめに「北米毎日」という新聞(アメリカの日系人向けの新聞だろうか?)に連載したエッセイや「信濃デッサン館ニュース」に連載したエッセイがまとめられている。これらには絵のことが書かれているわけでもなく、身辺におこる事象のエッセイである。だから、私にとってはあまり面白く無い内容である。

絵に関してはⅢ章以降に、村上華岳、野田英夫、松本竣介、広畑憲、吉岡憲、ベンシャーン、大森運夫、タカハシノブオ、竹内浩一、村山槐多などのことがまとめられている。
自分の知らない画家、作品が記憶に残っていない画家については、読んでもピンとこないのが実態であり、それは仕方が無い。最後に朝日新聞の記者と「20年を迎えて思うこと」と対談した内容を掲載している。この対談は面白い。

窪島氏の文章は、自分のことをさらけ出しており、こういうところは人を惹きつけるのだろう。ただ、さらけだすと言っても、何となく計算尽くでさらけ出しているような感じもするところが生臭いところであり、それも味となっている。
画商としても生活したことがある人で、この人なりに、一生懸命に生き抜いてきた姿勢が見える。

私が、この本でお目当てにした吉岡憲についてであるが、窪島氏は、写実風の画家という範疇に留まらず、独自の造形性とデフォルマションに裏打ちされた一種の表現主義的といえる画臭をそなえていたと書く。
そして「スピード感にあふれたデッサン」と「吉岡色彩とまでいわれる透明感のある茶褐色の色調」「卓抜な写実力」を評価している。
私の購入したデッサンも、一瞬にモデルの美しいところを把握して、それを素早く表現したようなものである。なお吉岡憲については、この館で『手練のフォルム』という資料集を刊行しているようで、今度、それを読んでみよう。

最後に「近頃、こんなふうな人間的な臭気をもつ画家、そういった人生の悲喜哀感のにじむ絵を描く絵描きが少なくなったな、と感じるのは筆者だけではあるまい」と結んでいる。



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