「日本の歴史 新視点中世史 躍動する中世 五」五味文彦 著

この本は、小学館の日本の歴史 全16巻の内の一冊である。一般向けの通史の一巻であるが、新視点中世史とあるように従来とは違った視点から展開している。日本の中世に流れる基調や、中世に登場した事象を説明している。
政治史や、戦いの歴史などはわずかに触れる程度である。新鮮な視点で興味深い内容も多い。

「あとがき」に著者が考える中世社会の特徴を5つ挙げているが、これが著者の書こうとした新視点中世史を雄弁に語っているかなと思う。
①神仏への信仰を根底に有していた。
②今日の地域社会の原型がつくられた。
③イエを媒介にした多様な人間関係(主従関係だけでない)や社会が形成された。
④分権化(中央権力も地方権力も含めて)の傾向が著しい。
⑤上の④に関係するが、人々が権力に頼らず、自力救済を求めた。訴訟にも、権利を裏付ける証拠の文書を自ら提出することが求められた。

その著者の視点に即して、本で読んだ内容をまとめると次のようになる。
「①神仏への信仰」
神仏への信仰として、院政を展開した上皇が何度も熊野詣を行ったり、平氏は厳島神社、源氏は鶴岡八幡宮を篤く信仰し、鎌倉仏教と言われる諸宗が興隆し、東大寺再建もなされた。蒙古襲来では神の加護があったと信じ、神仏習合思想が芽生え、地域ごとに神社も信心される。

「②地域社会の原型」
村、町、大都市(港湾都市…博多(境界、異国との接点、モノとの出会い)。政治都市…京都(西国の中央)、鎌倉(東国の中央)、平泉(陸奥の中央)、ヒトとの出会い。宗教都市…奈良(異界(他界)、ココロとの接点)などが生まれる。地方ごとに市が立ち、それが町の原点になる。

「③イエの形成」
氏から家に社会制度が変わる。古代は氏が単位だったが、氏の中の日常の社会単位の家が自立。天皇の家でも自分の子の継承を狙って、院政が後三条天皇からはじまる。貴族の家も家業が明確になり、日記で家業を記録する。武士も世の固めの家として、家祖を大事にして名乗りを家祖からはじめる。
鎌倉末期に土地開発が一段落して、単独相続の傾向が生まれる。職業の家も出来、百姓の家も鎌倉時代後期からゆっくりと進展する。

「④分権化」
平安時代までの律令制、江戸幕府の幕藩体制は中央集権である。それらに対して中世は分権化である。鎌倉時代は西が朝廷側、東が鎌倉幕府。室町時代も、関東は別途、公方と管領が治める。

「⑤自力救済」
中央集権が弱い分、人々は自力救済だ。蒙古襲来の時の竹崎季長の蒙古襲来絵詞は、自分の恩賞の為に、手柄をしつこく言上し、鎌倉まで訴えに行ったことを絵にしている。

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