「刀装具ワンダーランド」 川見典久 著

黒川古文化研究所勤務の著者が、所蔵の刀装具の魅力を記した本である。写真が素晴らしいかと思い、期待して紐解いたが、期待ほどではなかった。
精緻な画像の写真を拡大した写真を多用して、細かい彫りの魅力を説明しているのはいいのだが、品物の影の処理ができておらず、違和感がある。今井永武の紅葉に鹿角文目貫などは品物の影の為か、明るさ不足の為か残念な写真である。
そして、新しい視点として、例えば縁頭の頭を斜めから撮り、その拡大写真があるのだが、かえって魅力を減じているものもある。作った金工も、そんな風に観られることを想定していないのではと思う。金工作者は憮然としているのではなかろうか。栄乗の這龍文目貫の拡大(23頁)では龍の胸が不自然な向きになってしまう。宗与の獅子の頭(79頁)も観るに耐えない写真だ。名作の乗意の鉄拐図小柄の拡大(101頁)も感心しない。船田一琴の菖蒲に勝虫の頭は、拡大写真で、特に勝虫の彫りはあまり上手でないなとも感じる。もっと上手な金工だと思うが。

ただ、品物によっては、このような拡大写真でも魅力が減じられることもなく、素晴らしいものもあり、金工の技量の問題なのかとも思うところもある。
たとえば和田一真の四季耕作図の大小縁頭の頭の図も同じように斜め下からの拡大写真だが、こちらは違和感がなく、うまいと思う。岩本昆寛の藻鯉図縁頭大小は、昆寛がやはり名工なのだと認識する。魅力的な作品だ。
夏雄の菊花図縁頭もうまいなあと感心する。

縁頭の頭を斜めから撮った以外の拡大写真は参考になる。さすがに黒川古文化研究所の蔵品だ。
正阿弥伝兵衛の蓮葉文透鐔だ。技法、魅力がよくわかる。
東明の粟穂の金無垢大小目貫は素晴らしい。拡大することで魅力が倍加している。
如竹の勝虫図小柄も素晴らしいが、拡大した為に、トンボの羽の一部が欠損していることがわかる。後藤の植物なら虫食いとも思えるが、これは傷だと思う。

清寿の蛤雀文目貫は、今度の拡大写真で、はじめて雀が蛤になるという言い伝えの理由がわかる。確かに蛤の蝶番のところは雀に似ている。
安親の豊干禅師の鐔は名作だ。いいお顔をされている。虎ものどかだ。

普段、ここまで観ないのが拡大で見せてくれたのは平田七宝の富嶽図小柄である。七宝象嵌の色合い、その様子がよくわかった。
又七の枯れ木象嵌の透かし鐔が2枚。拡大写真で地鉄の鍛え肌を拝見し、なるほどこのようなものもあるのかと認識した。面の取り方もわかる。こういうのはフラットという感じではない。
鉄元堂尚茂の目貫もうまいなと感心する。

解説も、ところどころにあるコラム欄を読むと、もう少し踏み込んで書ける人だと思うのだが、展覧会の列品解説的に終わっているところもあり、残念である。

篠山篤興の初飾り文二所物は欲しいものだ。上手だと思う。昔から名工と思っていたが、改めて技量を見直した金工である。萩谷勝平もさすがである。

それほどの有名金工ではないが、この本で技量の見直した金工は、寿治、弘寿である。坂本光章の羅漢図鐔もうまいと思うが、拡大写真で、羅漢の足をみると、やはり腕が落ちるのかと思う。

正阿弥正徳のエビに笹蟹文鐔は、錆が浮いているような鐔で、手入れが必要だと思う。



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック