「明治維新の正体 徳川慶喜の魁、西郷隆盛のテロ」 鈴木荘一著

著者の本には次のようなものが上梓されている。
『勝組が消した開国の真実』、
『日露戦争と日本人』(http://mirakudokuraku.at.webry.info/200906/article_1.html)、
『アメリカの「オレンジ計画」と大正天皇』(http://mirakudokuraku.at.webry.info/201205/article_1.html)、
『アメリカの罠に嵌まった太平洋戦争』(http://mirakudokuraku.at.webry.info/201605/article_1.html

これらは面白い視点で教えられるところの多い本であったが、この本は少し内容が粗い感じがする。幕末の歴史はわかりやすい文章で著述されている。細かい内容で異論もあるが、幕末史を通史として読むには良い本と思う。

しかし、徳川慶喜を評価するのと、西郷隆盛を貶すのを本の中で急ぎ過ぎている感じがする。
例えば、大政奉還の考え方は西周が、イギリス議会主義を手本として作成し、慶喜はこの実現をはかる。慶喜の手ではできなかったが、それが五ヶ条のご誓文につながると評価している。

このようにイギリス型の議会主義を目指した理想を著者は評価しているが、本の別の所で、イギリスの外交官兼通訳のアーネスト・サトウは、幕府も諸侯の一人となって、ミカドを元首とする諸大名の連合体がいいと述べて幕府を引き摺り下ろす為に薩長に肩入れしていると批判している。
アーネスト・サトウの目指す政治形態もイギリス型議会主義だと思うのだが、この本だけだと著者の主張がよくわからない。そういうことで粗いと感想を述べている。
鳥羽伏見の戦い後に、慶喜が将兵を大坂城に置き去りにして江戸に帰った点についても、会津藩の重臣神保修理の言に従っただけと責任を転嫁している。

西郷隆盛を批判する箇所についても、なにかとってつけたような印象を感じる。無慈悲な命令を出していると批判するが、賊軍の庄内藩などは確か西郷に感謝していたと思うが、そのような逸話は紹介されていない。

水戸学を肯定的に評価して、その内容を紹介しているが、こういう見方は参考になる。

紙幅の関係か、何か急がされて本にまとめたような感じがするのは残念である。この時代を書いた著者の本では『勝組が消した開国の真実』が良い本である。



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