「武家義理物語」 井原西鶴 著

これは面白い物語がいくつかある。読んだのは明治書院刊の「決定版対訳西鶴全集」の中の一冊で、現代語訳の部分である。
全6巻であり、各巻に4~5編の物語が収められている。武士の話で、衆道(しゅどう…美少年愛好)の話もいくつかあり、この頃は恥じることなく、おおっぴらだった。言い交わした男が相手に義理を果たすような美談が納められている。また仇討ちの物語も数編ある。

面白い物語を3つほど紹介する。筋を簡単に意訳していることを承知していただきたい。

「我物ゆへに裸川」は、川に銭を10枚ほど無くした青砥藤綱が土地の者に大金を与えて探させる。しばらくすると拾い集めた男がでる。青砥はこの男に褒美を与える。国の重宝たる銭を無くしたら天下の損、自分の損は回り持ちになるから問題がないというわけだ。この話はよく知られている。ここではその後がある。
探した人足どもは、青砥の褒美で宴会している。この時に、銭を見つけた人足が「あれはオレの10銭だ。見つけたとして、それ以上の褒美をもらった」のだと自慢気に話す。この時、一人が、「そういうことは青砥の志を無にすることだ。自分の母親はそんな男の仲間にいることを嘆くだろう」と宴会の場から抜ける。いつしか、この話が青砥藤綱の耳に入り、褒美をもらった男はつかまり、罰として裸で青砥の無くした銭を探させられた。

「発明は瓢箪より出る」の話は、前段の話を省略するが、伏見で船に乗って、乗り込んだ連中が酒盛りをはじめる。そのうち、武士同士がかねての意趣もあって喧嘩になる。刀を抜きあおうとするが、一人は刀を捜すが、刀がない。この武士は、このような事態になったのも武運が無いわけだから切腹するとなる。
その時に乗り合わせた一人の武士が、「ちょっと待て、私に貴公の刀が無くなった理由のあてがある。見つかれば私の言い分を聞いて欲しい」という。
そして、この武士は一緒に呑んでいた出家の男に「瓢箪はどうした」と聞く。その武士は、この出家が瓢箪に長い紐がついたものを持っていたことを見ていた。この出家は当該の瓢箪を持っておらずに、川に身を投げる。
船で川を戻る内に、瓢箪が浮かんでいるのが見つかる。その下に紐に縛られた刀が出てくる。要は瓢箪を浮きにして刀を水中に沈めておき、あとで回収するつもりだったわけだ。喧嘩をしていた2人の武士は、この武士の言い分(つまらぬ喧嘩はやめて主君に忠を果たせ)を聞いて仲直りをしたというわけだ。

物語の題名は失念したが、この話も印象的である。
つまらぬ鞘当てから少年同士が喧嘩になり、一人が殺される。殺した方は家に帰り、父に事実を告げる。父は事情はわかったが、息子だけが無事で、相手が死んだとなると、相手の家に申し訳が立たないから、お前は死ぬ覚悟をして、相手の家に行って詫びてこいと送り出す。
相手の家では息子の仇を討てると意気込む家人もいるが、そこの当主は、ここまで正直に申し出た者を殺すと自分の武士としての一分が立たないとなる。結果、この息子は実家に帰らず、殺された家に養子に入り、孝行を尽くすという物語である。

武士という身分の者の生きざまを描いていておもしろい。



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