「北斎 ポップアップで味わう不思議な世界」コートネイ・ワトソン・マッカーシー著

私の本『江戸の日本刀』の出版を祝って、ある方の奥様からプレゼントされた本である。仕掛け絵本のようにページを開くと、絵が飛び出すように折り畳まれている。だから本を開くと「ワオ-」である。

「神奈川沖浪裏」は、幾層もの波、そして漂う船、それに富士山と立体的に出てきて驚く。今、ちなみに数えてみたら波と漂う船で8枚に富士山分が1枚の合計9枚が折り込まれている。
娘などは大喜びである。ただ娘の赤ちゃん(私の孫)にはまだわからないが、いつか彼の絵本になるだろう。

他に折り込まれている絵は「諸国瀧廻り下野黒髪山きりふりの瀧」と肉筆の「鳳凰図屏風」、「百人一首乳母が絵説在原業平」と「富嶽三十六景駿州江尻」に「菊に虻」である。

諸国瀧廻りは北斎の中では私の好きなシリーズであるが、白と青(プルシャン・ブルー)で描かれた瀧水の流れが生き物みたいで気持ちが悪いが、良い絵である。解説には暖色と寒色を注意深く使いこなしているとある。プルシャン・ブルーとはベルリン青=ベロ藍=ヒロシゲ・ブルーである。当時の浮世絵師は、この色を喜んだのだと思う。

鳳凰図屏風は初見だが、北斎画と伝わっているようだ。仕掛けは鳳凰なのだが、解説にはバックの金の屏風において3種類の金が使われていたことが書かれている。また鳳凰の”とさか”部分はヨーロッパの混色技法を使っていると書いてある。これは版画ではできず肉筆の醍醐味だ。
ページ見開きだけでは収まらす、ページ自体も折り込みで伸ばして、大きな羽根を表現している。そして、そこにも仕掛けがしてある。同様な絵として北斎には「八方睨み鳳凰図」があるようで参考図として所載されている。この絵と鳳凰の目は同じであり、この屏風が北斎というのも頷ける。

在原業平の絵は橋の上の人物を仕掛け絵本にしている。橋も立体的にし、その上の人物も皆立ち上がるような仕掛けである。複雑な仕掛けである。

駿州江尻は枯れ野に風が吹き渡り、その風に旅人が翻弄されている絵である。翻弄されている木々や人物が仕掛けで立ち上がり、風の凄さを出している。もちろん、奥には富士山だ。風が吹こうが動かない。

菊に虻は、菊を観察して精密に描いた浮世絵である。各種菊花の花弁を立体にしている。よくこのような仕掛け(開くと丸く立体的になり、本を閉じると平らに収まる)ができるものだと感心する。

なお、解説は外国人だ。私はこれまで日本の浮世絵が伊万里の磁器などの箱に詰め物としてヨーロッパに渡り、それをヨーロッパ人が面白いと感じたと聞いていたが、この本では、その前にヨーロッパの品物が日本に来た時の包装紙に、ヨーロッパの印刷があり、それから日本の画家が遠近法などを学んだことも書いてある。相互に影響しあったと言うことである。

それから特記すべきは、この本が絵本を意識しており、解説文の全ての漢字にルビ(振りカナ)をつけていることである。私などにはうるさいが、なるほどと思う。


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この記事へのコメント

まあちゃん
2017年01月06日 17:23
参考にと思うのですが、映画「天才スピヴェット」2013年、ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品の中にも、折り畳み絵が何か所か出てきます。立体絵に興味をお持ちのようなので、映画鑑賞もどうでしょうか?105分の手ごろな長さです。
分裂しそうな家族を思う、ひとりの少年の決意がテーマになっています。

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